石破おろしで高市政権樹立という「悲願」

 また、裏金議員の比例重複立候補が許されないことから、比例に入れると石破氏を助けるということで、比例で自民に入れない運動も起きている。

 もちろん、裏金議員には、右翼層の献身的な支援がある。

 石破政権としては、この選挙で、旧安倍派が壊滅するので、自民議席は減っても自公で過半数さえ取れれば、選挙後の石破おろしは、その担ぎ手を失って不発に終わるという夢を見ているかもしれない。

 だが、前述の右翼層の複雑な動きが効果を表すとどうなるか。

 比例票が激減して、旧安倍派以外の比例復活や比例単独候補の当選が少なくなって自民党全体では予想以上の大敗となる一方、右翼層の死に物狂いの応援で旧安倍派議員が意外と勝ち上がり党内での力を維持するという可能性がある。

 その結果、自公過半数割れと同時に旧安倍派勢力の減少が最低限にとどまるかもしれない。

 その場合、日本維新の会や国民民主党などを取り込んで、石破おろしで高市政権樹立というのが、右翼層の悲願なのだろう。

 高市首相実現までの間に岸田文雄前首相緊急登板などという冗談のような話も出るくらい、すでに自民党内は、「ぐちゃぐちゃ」「カオス」状態に陥っている。高市支持グループのなりふり構わぬ動きは、その自民党に最後の一撃を加え、一気に破壊してしまうかもしれない。

 一方で、「政権交代前夜」をスローガンに掲げて代表に選ばれた立憲民主党の野田佳彦代表は、裏金議員の選挙区で野党の選挙協力を、などと言っているが、念仏を唱えるだけで、何の努力もしていない。

 自ら共産党を怒らせる発言をしたのに頭を下げるわけでもなく、その無策ぶりは目に余る。

 仮に、これだけの自民党の失策と党内の混乱がありながら、それでも政権交代できず、高市独裁政権を生み出したとなれば、野田氏は、2012年の民主党政権崩壊のA級戦犯としてだけでなく、日本の民主主義崩壊のA級戦犯として歴史に名を残すことになるだろう。

 自民断末魔の大混乱と立憲の無能無策、どっちもどっちだが、その結果、被害を受けるのは我々国民であることは如何にしても変えようのない現実だ。

 それでも、絶望はせずに、少しでもマシな政治家は誰なのかを見極めて投票し、選挙後の政界大混乱を待つ。悲しいが、我々国民にはそれしかないようだ。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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