高市早苗前経済安全保障相

自民党が「右翼」に乗っ取られる?

 しかし、その図に書かれた「組織党員」という表記の下に、小さく「日本会議・神社本庁etc...」とだけ注釈が付けられていたため、いかにも組織党員が全て右翼的な組織の党員であるかのような印象を与えたのだ。

 その結果、この図だけを見て誤解した人が、自民党員の4割が右翼団体の組織党員だとネットに投稿したために、「自民党が右翼団体に乗っ取られた!」という言説が広がったようだ。

 全体が105万人ほどの自民党の党員等のうち約4割が組織党員だというのは間違いなさそうだ。ただし、そこでいう組織党員というのは、業界団体や地域の経済団体の組織党員が中心である。宗教団体や右翼団体の組織党員はほんの一部に過ぎない。つまり、党員の4割、すなわち40万人程度が右翼団体のメンバーだというのは明らかに誤った見方なのだ。

 現に、BS-TBSの放送を確認すると、藤川氏は、「神道政治連盟とか遺族会の党員は何万人もいますから」と述べていた。

 自民党が右翼団体に乗っ取られたというのは、反高市の人々から見ると魅力的な話かもしれないが、これは根拠に欠ける主張である。

 では、高市氏がここまで党員の支持を伸ばせた本当の理由は何か。

 そこには大きく分けて二つの要因がありそうだ。

 一つ目は、高市氏が自ら党員獲得の努力を続けてきた効果である。2023年の自民党員獲得数のランキングでは、1位が青山繁晴氏、2位が高市氏だった。高市氏はここ数年上位に名を連ねてきた。3年連続1位の青山氏は、筋金入りの右翼政治家だ。つまり、高市氏や青山氏のような政治家が、右翼層を自己の支持者とした上で、党員にする努力を続けてきた結果、それらの党員が積極的に高市氏に投票したということが言えるのではないだろうか。

 そして、二つ目が、高市氏の選挙広報戦略だ。高市氏は、バリバリの右翼、極右と言っても良い政治家である。高市氏が首相になったら、安倍氏を遥かに超える右翼的言動を確信犯的に行い、その結果、中国との関係は抜き差しならないところまで悪化するだろうし、せっかく好転した日韓関係も、靖国参拝や歴史認識問題などで振り出しに戻る可能性がある。また、大量の国債を発行して際限のない軍拡に走り、台湾有事に巻き込まれるどころか自ら有事を誘発しかねない。

 自らを「鉄の女」サッチャー元英首相に重ね、力強いリーダーを演じる高市氏だが、それは、彼女の岩盤支持層には受けても、中間層の人たちから見ると、むしろ危険な政治家だと見られたり、弱者に冷たいのではないかという印象を与えたりする。総裁選の決選投票で石破氏が逆転したのも、多くの自民党議員が、高市氏の極端な右翼政治家というイメージが選挙でマイナスになることを懸念したからだということも広く言われた。

 そうしたことは、高市陣営も十分に認識していたようで、意図的に、親しみやすい、優しそうな、あるいはひょうきんな高市氏というイメージを演出するためのショート動画を大量に流し、従来の岩盤右翼の支持層とは別の、普通の中間層に大きな支持を広げたと見られる。

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気付かぬうちに高市早苗帝国ができる?