9月10日に行われたテレビ討論会でのハリス。現地の主流メディアは「ハリス勝利」と報じた(写真:ロイター/アフロ)
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 11月の米大統領選に向けて行われた、カマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領によるテレビ討論会。その直後、主流メディアは「ハリス氏が勝利」というヘッドラインで報じたが、ハリスは大統領に近づいたのか。AERA 2024年10月14日号より。

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 現地時間9月10日に行われたテレビ討論会で、モデレーターの一人、ABCニュースのデイビッド・ミュアーは最初の質問でカマラ・ハリスにこう尋ねた。

“When it comes to the economy,do you believe Americans are better off than they were four years ago?”(経済に関して言うと、アメリカ人は4年前より生活が豊かになったと思うか?)

 ハリスはこう答えた。

「私は中流階級の子どもとして育てられました。私はこのステージで、中流階級とアメリカの労働階級を押し上げる計画を持っている唯一の人です」

 そして、〈機会の経済〉(opportunity economy)のプロモーションを始めた。つまり、質問への直接の回答は「はぐらかされた」。ミュアーも追及しなかった。

 この回答を「scripted answers(台本通りの回答)」と評したコメンテーターは多い。ハリスの「苦手な分野」と言われる経済について、どう答えるか、私は興味津々に見守ったが、同じ感想を抱いた。この討論会で一見アドリブと思える言葉も、用意されたセリフであったように思う。

 国境対策について“My question tonight to you is why did the administration wait until six months before the election to act and would you have done anything differently from President Biden on this?”(なぜ政権は選挙の半年前まで行動を起こさなかったのか? また、バイデン大統領と何か違うことをしたのか?)という質問には、こう答えた。

「私はこのステージで、銃、麻薬、人身売買の国際犯罪組織を起訴した唯一の人間です」

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テレビ討論会に「勝者はいなかった」