昆虫採集用のライトに集まったカメムシ=新谷喜紀教授提供

カメムシでコメ不足

 果樹害虫のカメムシとは別に、稲の害虫となるカメムシもいる。

 これらのカメムシは最近の米の価格高騰の一因でもある。

 今年産の、最も品質がよい「1等米」の比率は全国平均63.7%(8月末時点)。米不足に陥った昨年同時期より5.2ポイント下回った。猛暑による高温障害に加えて、大量発生したカメムシの影響もある。カメムシ被害が特にひどかった静岡県では、1等米の比率が昨年に比べて3割ほど減ったという。静岡県米麦協会の古川信好事務局長は言う。

「稲穂が出たときに『斑点米カメムシ類』に汁を吸われると、玄米が黒ずみ、『斑点米』になってしまう」

 米の検査で斑点米が0.1%を超えると「2等米」、0.3%を超えると「3等米」、0.7%を超えると「規格外」になる。

 斑点米だけでなく、米が実らない「不稔(ふねん)」の被害も増えている。

「最近、特にひどくなってきているのが『イネカメムシ』の被害です。イネカメムシは籾の付け根から汁を吸う。すると、稲は不稔になってしまう」(古川さん)

 静岡県病害虫防除所によると、7月の斑点米カメムシ類の誘殺数は平年(過去10年の平均)の2~3倍程度多かった。

稲穂につくイネカメムシ=千葉県提供

カメムシは「つまむな」危険

 農業被害も深刻だが、カメムシの害といえば、やはりあの強烈なにおいだろう。追い払おうとした際に、刺激臭が手についた経験のある人は多いはずだ。

 実は、多数のカメムシが集まることと、においは、密接に関係している。通常、カメムシはにおいを仲間同士のコミュニケーションの道具として使っていると、先の新谷教授は言う。数匹が集まると、そこに続々と仲間が飛来してくるほか、集まった仲間とともに集団で越冬するクサギカメムシのような種類もいる。

「カメムシは常に人間が感じられないくらいの、ごく微量のにおいを出しています。コミュニケーションに使うのも、その微量なにおいです」(新谷教授、以下同)

カメムシに吸われて変色した「斑点米」=千葉県提供
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カメムシは「つまむな危険」