実りの秋だ。ナシやリンゴ、カキなどが旬を迎えている。だが、各地でカメムシが大量に発生し、果物に深刻な被害をもたらしている。意外な場所や作物にもカメムシがいる。
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朝日に輝くグラウンドの正体は
「その日は、グラウンドがやけに光っているな、という感じでした」
秋田市・さきがけ八橋球場の管理業務に携わる佐藤雅之さんはそう振り返った。9月24日のことだ。朝6時半に出勤し、グラウンドに目を向けると、すぐにいつもとは違う“輝き”に気がついた。
「近寄って見たら、無数の緑色のカメムシの背中が朝日を受けて光っていた」(佐藤さん)
10時から秋季東北高校野球秋田県大会の準々決勝の試合が始まる予定だった。試合の邪魔になってはいけないと、職員4人全員、ほうきとちりとりでカメムシを取り始めた。だが、カメムシは、内野だけでなく、バックネットや外野の芝生にも「たくさんいた」(同)。
しばらくして県高校野球連盟(高野連)の役員10人ほどが加勢した。
「試合開始ギリギリまでカメムシを集めましたが、芝生の中のカメムシまでは取りきれなかった。選手たちはプレーに集中していたので、気にならなかったと思います」(同)
集めたカメムシ、なんとバケツ6杯分!
この日、集めたカメムシはバケツ6杯分。9月中旬から、毎日「20~30匹は見かけていた」が、これほど多くのカメムシを見たのは初めてだった。
カメムシのハイシーズンは、実は秋だ。そして今年の秋も、カメムシが大発生している。
カメムシの生態に詳しい南九州大学環境園芸学科・昆虫生態学研究室の新谷喜紀教授は、秋田市のグラウンドに現れたのは「ツヤアオカメムシに間違いないでしょう」と話す。
ツヤアオカメムシの体長は10~18ミリほど。「南方系のカメムシ」で、つい最近まで生息の北限は東北南部付近といわれてきた。
「それが秋田市で大発生したのは、異常気象の影響かもしれません。ただ、えさもないグラウンドに大量のカメムシが飛来したのは不思議です。カメムシは身近な昆虫ですが、なぞが多い虫なんです」(新谷教授)
カメムシが被害をもたらすのは
ツヤアオカメムシをはじめ、さまざまなカメムシは果実に被害をもたらす「果樹害虫」だ。果実に口針を刺し、汁を吸う。傷やへこみができたり、変色、落果したりする。
農林水産省によると、カメムシによる農業被害は全国に広がっている。今年に入って38都府県が「果樹カメムシ類の警報・注意報」を発表(10月1日時点)。発表回数は61回と過去10年で最多だ。特に被害が深刻なのは愛媛、広島、鳥取で、警報が出された。
鳥取県ではツヤアオカメムシの発生数が平年の約70倍(7月下旬時点)。秋にかけて猛威をふるい、県JAによると特産の二十世紀梨の出荷量は前年比22.9%減の2200トンになる見込みだ。