悪臭のもとは刺激性アルデヒド類
だが、鳥などの天敵に襲われた際には、普段よりもはるかに高い量の液体を分泌して追い払おうとする。この液体に含まれている刺激性のアルデヒド類が、あの悪臭の原因だ。
「カメムシを握ってしまうと、液体が手や指に付着して、オレンジ色に染まる。手を洗っても2、3日とれないくらいにおいも色もひどい。それは、天敵から身を守るための手段なんです」
カメムシが家の中に入ってきたら、手や指で触らずに捕獲することだ。
「におい物質を出させてしまうので、カメムシを『つまむ』行為は厳禁。ティッシュペーパーでつまんで、くるんでもかなりのにおいが出る」
新谷教授自身は普段、家の中にカメムシが入り込んでも「全然気にしない」。ただ、必要に迫られて追い出す場合は、ペットボトルを切って使うという。
ペットボトル(大きさは問わない)の上部で切断し、上半分の漏斗(ろうと)状になった口の部分を持って、漏斗のふちでトントンと軽くカメムシの周囲を刺激して歩かせる。その先に残り下半分のペットボトルを構えて、カメムシを追い込むのだ。容器の中に入ったら、外に運んで逃がす。
白い洗濯物は「居心地がいい」
これからの時期の昼間は、カメムシは日当たりのよい、白っぽい場所に集まりやすいという。
「カメムシは基本的に、えさとなるスギやヒノキの実や、越冬場所を求めて5キロ、10キロと、かなりの距離を飛翔します。その一部が、たまたま日当たりのよい白っぽい場所に降り立つと、暖かく居心地がいいので、とどまる。それが白い洗濯物だったりするわけです」
嫌われ者のカメムシだが、においでコミュニケーションをとり、集団でも活動するとても興味深い昆虫だという。
秋が深まると、カメムシは気温が下がりにくい物陰で越冬する。本来の生息地は森だが、人里は越冬に適した物陰が豊富で、すみ心地がいいようだ。
ある晴れた日、あなたもカメムシの絨毯を目撃する日が来るかもしれない。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)