それから10年後の78年には、ドラフト前日に有名な江川卓の“空白の1日”事件が起きる。これもルールの盲点をついた“ゴリ押し入団”として社会問題にもなったが、2カ月余りにわたる騒動の末、小林繁との三角トレードという形で、巨人・江川が誕生したのは、ご存じのとおりだ。
前出の別所引き抜き事件同様、多少の紆余曲折やペナルティはあっても、最後は巨人の思いどおりになったという意味では、やり得感は否めない。
その後も、ドラフトで逆指名制が導入されると、96年の三沢興一や02年の長田昌浩ら、本来なら1位指名されてもおかしくない選手が巨人以外の球団をけん制するような発言で“逆指名”をし、3位以下で獲得する事例も相次いだ。巨人だけ逆指名枠が増えたも同然だった。
現行のドラフト制度下でも、10年に沢村拓一、12年には一浪中の菅野智之が「巨人以外なら拒否」を宣言。他球団が指名を回避した結果、一本釣りに成功している。
野球に限った話ではないが、どんなにルールが変わっても、抜け道がなくなることはないのだ。(文・久保田龍雄)