「自分が思い描く人生を送るためには、自分自身の力をしっかりつけておかなければと考える若者が増えています。これに伴い、これまで企業が握っていたキャリアの主導権は個人へと移りつつあります。『自分の人生を自分で築く』という姿勢は、企業頼みだった日本の働き方を大きく変えていくことでしょう」
学びと働きをつなぐインターンシップ
22年4月の「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」における三省合意改正により、25年卒以降のインターンシップが新たに定義された。
「この改正により、一定の基準を満たす内容のインターンシップを実施することで、参加学生の情報を採用活動に活用できるようになりました。この改正は、学ぶことと働くことを接続し、好循環をつくりだす取り組みとして評価できます」
教育現場ではインターンシップを学びの妨げになると考えるケースもみられるが、学生はインターンシップにどう臨めばいいのだろうか。
「学生が将来働くことをイメージしながら今の学びの意味を考えること、あるいは自分が思い描く人生のためにどのように学べばいいのかを考えること。インターンシップから得られるこうした過程は、主体的な学びにつながるはずです」
幅広い可能性が未来を開く
栗田さんは、VUCAの時代に就活に取り組む学生について「不確実性を極力排除する傾向が強い」と話す。
「けれども、中長期的に見ると多様な可能性があるほうが望ましいと思います。先述の『初期配属確約採用』についても、選択肢としてはあったほうがいいが、キャリアを築く手法としてベストかはわかりません。スタンフォード大学のクランボルツ教授は『個人のキャリアは、予期しない偶然の出来事によってその8割が形成される』と説いています。将来を決めつけすぎないほうが、可能性は広がるのではないでしょうか」
さらに「早期にキャリアを築かなければ」と焦りすぎる必要もないという。
「やりたいことが明確でなくても、自分にフィットする選択肢を選ぶうちに、やりたいことの解像度は上がってくるはずです。知名度や社格など、世の中の物差しに振り回されないことが、満足感の高い意思決定につながります」