リクルート就職みらい研究所所長 栗田貴祥さん「何が起きても生きていけるように、個人の力を身につけられるところで働きたいと考える若者が増えているのです」(写真・和仁貢介<写真映像部>)
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 VUCAの時代と呼ばれる現在、若い世代のキャリア観や就活はどう変化しているのか。就職や採用に関する調査分析を行うリクルート就職みらい研究所の栗田貴祥さんに聞きました。発売中のアエラムック「就職力で選ぶ大学2025」(朝日新聞出版)より紹介します。

【図】就職先を決める際に決め手となったことは?

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 2024年3月卒業の大学生の就活は、売り手市場が続き、内定の早期化が進んだ。昨今の就活について栗田さんは、「企業と個人の関係性が変わりつつある」と話す。

「18歳人口の減少による構造的な労働力不足を背景に、企業側が個人の価値観に寄り添う動きが目立ちます。その一例が、最初の勤務地や職務を入社前に確約する『初期配属確約採用』を導入する企業の増加です。これは『希望する地域や職種で働きたい』という学生の希望に応えることで、内定辞退を防ぎ優秀な人材確保につなげようとするもの。ほかにもワーク・ライフ・バランスの充実など価値観の多様化に伴い、企業側もより多くの選択肢を用意するようになっています。個人は多様な選択肢の中から、自分にフィットする働き方を選べるようになりつつあります」

 企業と個人の関係性の変化は、学生が就職先を選ぶ理由にも表れている。就職先を確定する際の決め手について、24年3月卒の学生に尋ねた調査では「自らの成長が期待できる」ことが1位で、全体の49.6%が挙げている(就職みらい研究所「就職プロセス調査 2024年卒3月卒業時点」)。

就職先を決める際に決め手となったこと(就職みらい研究所「就職プロセス調査 2024年卒3月卒業時点」から)

「高度経済成長期の日本では、会社に尽くせば終身雇用や年功賃金など安全・安心・安定を手に入れることができました。ところが今は、先行き不透明かつゼロ成長の時代。企業に忠誠を尽くしてもリターンがあるかわからず、安全・安心・安定もおぼつかない。そこで、何が起きても生きていけるように、個人の力を身につけられるところで働きたいと考える若者が増えているのです」

キャリアの主導権は企業から個人へ

 さらに栗田さんは、東日本大震災やコロナ禍など激しい変化を体験し、不確実性の高い状況で成長してきた世代の価値観が、日本の働き方に影響を与えていると話す。

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キャリアの8割は“予期せぬ出来事”でできている