SBI証券 高村正人社長(撮影/写真映像部・和仁貢介)

 これまで先陣を走ってきたが、つみたてNISAでは楽天証券に抜かれた。同社による投資信託のクレジットカード積み立てが当たり、一気に口座数を伸ばしたことが主因だ。新NISAでは負けない──。初年の巻き返しは鬼気迫るものだった。

「新NISA1年目の金融機関変更ができた23年10〜12月は23万口座が他の金融機関から当社に移ってきました。このうち楽天証券が49%を占め、野村証券やメガバンクが後に続きます。今年もSBI証券へのNISA口座の『引っ越し』は続き、1〜6月で13万口座です」

 新NISAの金融機関全体の口座数は2323万口座。そのうち証券会社は1623万口座(日本証券業協会発表/24年3月末)。SBI証券504万口座。楽天証券552万口座(いずれも決算説明資料/6月末)。抜き返すまで、あと一息。

他社と組めばいい

 NISAに限らず、ネット証券の口座獲得に小細工は通用しない。手数料が、品揃えが、使い勝手が悪ければ、他社へあっさり乗り換えられてしまう。

 SBI証券の一番の競合とされる楽天証券は6月末で総合口座数1133万と発表した。SBI証券グループ(傘下含む)は1300万。高村社長は楽天証券をどう見ているのか。

「私には楽天グループについて消費者としての『手触り感』がない。システム開発の現場では楽天証券の使い勝手を参考にすることはあるでしょう」

 火花を散らした返答を期待したが、肩透かしだった。

「クレジットカードやポイントも他社と組んでやればいいというのが私や北尾(吉孝SBIホールディングスCEO)の判断です。だから三井住友カードのほか、高島屋カードや東急カードなど7種類のクレジットカード会社と手を結びました。投資により付与されるポイントも、VポイントやPontaポイント、JALのマイルなど5種類から選べる仕組みにした」

 自前のクレジットカードやポイントで顧客を囲い込む形の楽天グループとは対照的だ。

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