SBI証券 高村正人社長(撮影/写真映像部・和仁貢介)

 今年3月、クレジットカードによる投資信託積み立ての上限が月5万円から10万円に引き上げられたのを機に、ネット証券各社でカードの積立額は急増した。個人にとって便利で有利だが、「中の人」には頭の痛い問題もある。年会費無料のクレジットカードを投資信託の積み立てだけに使い、普段の買い物では別のカードを使う人たちの存在だ。SBI証券はよくても、クレジットカード会社にとってうまみがなさすぎる。SBI証券は、三井住友カードによる投資信託積み立てのポイント還元率を「投資信託以外の買い物を年10万円以上で投資信託積立額の0.5%」とした。これは年会費無料の「三井住友カード(NL)」の場合。同「ゴールド(NL)」なら年100万円以上の買い物で1%、「プラチナプリファード」なら年300万円以上の買い物で2%、500万円以上で3%だ。月10万円×12カ月の積み立てで3%なら年3万6千ポイント。しっかり買い物をして投資信託も積み立てる顧客が、より得をする仕組み。

「私たちにできるのは買い物を促す程度です。ただ、三井住友カードをはじめ投資信託クレジットカード積み立ての提携先は事業パートナー。一方が儲かり、他方が損をする関係は続きません。年間の買い物金額の条件に関しても時間をかけて相談し、お互いが経営的に無理しすぎることなく持続可能な形になるように決着させました」

 買い物の条件といっても年間最低10万円、1カ月あたり8333円のカード決済。それほどハードルは高くない。年会費は払わず買い物もしないが、投資信託積み立てのポイントだけは欲しいという顧客にクレジットカード会社が「ノー」を突き付けたとしても、合理的な反論はできないのではないか。

 取材の際、興味深い話を聞いた。日経平均株価が8月5日に前営業日比4451円安となったが、この日を中心とする3営業日の平均で、SBI証券のNISAでは日本株が158億円、投資信託は積み立て分を除いても109億円の買い越しだったという。

「7月の1日あたりの平均取引額と比べ、暴落日前後の日本株は約6倍、投信は3割ほど買い越し額が増加しました」

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300万円がボーダー