顧客獲得競争でデッドヒートを繰り広げるネット証券の雄。ネットを主軸とするだけに
人情も小細工も使えない。競合に負けずトップを走り続けるための策を語る。AERA 2024年10月7日号より。
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来年に2年目を迎える新NISAの「2025年の金融機関変更」が今年10月に始まる。金融機関の顧客獲得競争が熱を帯びそうだが、ネット証券預かり資産最大手のSBI証券を率いる高村正人社長は「やり切ります」と表情を引き締めた。
SBI証券は24年7月に総合口座1300万(傘下含む)を突破した。ほぼ同じ時点で野村証券は553万口座、大和証券は313万口座(競合ネット証券に関しては後述)。
23年9月に「ゼロ革命」を掲げて日本株の売買手数料を完全無料にした。新NISAでは米国株や海外ETFの売買手数料もタダに。この動きに競合ネット証券も追従した。
SBI証券は1999年10月のサービス開始当初(当時の社名はイー・トレード証券)から手数料が競合に比べて安く、常にトップにこだわり続けてきたように見える。ふと疑問がわいた。某政治家ではないが、1位でなければダメなのだろうか。
高村社長は「お客さまの評価は極めて重要です。口座数1位は評価の証し。こだわらざるを得ません」と即答した。
36万口座を奪還
評価にこだわる、といえば9月20日。SBI証券は9月にリニューアルした「SBI証券 株アプリ」の提供をいったん停止し、リニューアル前のものを再配信しはじめた。
「お客さまから多くのご意見をいただき、急遽、いったん旧バージョンに戻す判断をしました。今後、改善に努めます」
せっかく株アプリを刷新したのに、顧客の不満を受けてたった1週間で停止。もちろん、一発で大好評のリニューアルができればいいが、そうではなかったとき謙虚に頭を下げる(旧バージョンに戻す)──簡単にできることではない。SBI証券は投資信託サイトのリニューアル(こちらは好評)なども進めてきたが、これも「見づらい、使いにくい」というユーザーからのダメ出しに応えたものだ。