お腹の不調が起こる原因として、次に挙げられるのが、「自律神経の乱れ」です。

 生活習慣の乱れや過度のストレスなどによって自律神経が乱れ、交感神経優位な状態が続くと、ぜん動運動が過剰に抑制され、消化物の移動速度が落ち、消化物中の水分が吸収されすぎて便が硬くなり、便秘が起こりやすくなります。

 逆に、副交感神経優位な状態が続くと、ぜん動運動が過剰に活発化し、消化物の移動速度が速くなり、消化物中の水分が吸収されづらくなって便がやわらかくなり、下痢が起こりやすくなるのです。

 ほかに、食中毒やウイルス感染、暴飲暴食やストレスによる消化不良などが、下痢の原因となることもあります。
 

慢性的な便秘には3つのタイプがある

 なお、便秘には、下の図のようにさまざまなタイプがありますが、日常生活が原因で起こる慢性的な便秘は、「弛緩性便秘」「痙攣性便秘」「直腸性便秘」の3種類に分けられます。

・弛緩性便秘

 高齢者や女性に多く見られる便秘で、加齢や運動不足、水分不足、食物繊維不足、腹筋力の低下などによって大腸の動きが悪くなり、便が長時間腸内にとどまり、水分が過剰に吸収されて硬くなるために起こります。日本人の便秘の多くは弛緩性便秘だといわれています。

・痙攣性便秘

 若年者に多く見られる便秘で、ストレスや不規則な生活などによって自律神経が乱れ、便がうまく運ばれなくなることで起こります。

・直腸性便秘

 高齢者や寝たきりの人、仕事や学校で自由にトイレに行くことができない人に多く見られる便秘で、便意があっても排便を我慢してしまうことを繰り返し、直腸の排便反射が低下して起こります。

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小林弘幸

小林弘幸

小林弘幸(こばやし・ひろゆき) 順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。1987年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科などの勤務を経て順天堂大学小児科講師、助教授を歴任。腸と自律神経研究の第一人者。『医者が考案した「長生きみそ汁」』など著書多数。テレビなどメディア出演も多数。

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