逆に、近年の研究により、便秘や下痢などが解消され、腸内環境が整うと、自律神経が整うこともわかってきています。
 

毎日、便が出ていても、便秘の人もいる

 次に、便秘や下痢など、お腹の不調が起こるメカニズムをお話ししましょう。『便通異常症診療ガイドライン』(編集・日本消化管学会)では、便秘と下痢を以下のように定義しています。

・便秘:本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎便状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態。

・下痢:便形状が軟便あるいは水様便、かつ排便回数が増加する状態。

 便秘に関しては、「何日間、便が出ていなければ便秘」といった、具体的な日数は記されていません。つまり、2、3日排便がなくても、問題なく便を排泄できていれば便秘ではなく、毎日排便をしていても、過度にいきまなければ便が出なかったり、残便感があったりすると、便秘の疑いがあるということになります。

 ちなみに、通常は便の80%が水分ですが、便秘になると水分の割合は70%以下に低下し、下痢になると90%以上に増えます。
 

腸内環境の悪化や自律神経の乱れが腸の不調を招く

 お腹の不調が起こる原因として、まず挙げられるのが、「腸内環境の悪化」です。

 腸内にはおびただしい数の腸内細菌がいますが、過度のストレスを感じたり、食物繊維や発酵食品の摂取量が少なく、タンパク質や脂質の摂取量が多すぎる食生活を続けたりすると、腸内細菌のバランスが悪化し、有害菌が優勢になります。

 有害菌が優勢になると、有害菌の出す有害な物質によって腸管が麻痺し、大腸のぜん動運動が鈍くなり、便秘になりやすくなります。あるいは逆に、有害菌の出す有害物質を早く排出しようとして、ぜん動運動が活発になりすぎることがあります。

 すると、大腸で消化物中の水分が十分に吸収されず、便がやわらかくなり、下痢が起こりやすくなります。下痢が長く続くと、有害物質だけでなく、有用菌まで排出されてしまい、腸内環境はますます悪化します。

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高齢者の便秘は運動不足や水分不足が主な原因