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 第二の脳と呼ばれる腸には1億個の神経細胞があるという。脳とは切り離せない相関関係にあり、身体全体に及ぼす影響も大きい。腸の研究で知られる順天堂大医学部教授、小林弘幸氏の著書『お腹が弱い人のための30秒腸活』(アスコム)から一部を抜粋し、腸の働きの奥深さを紹介する。

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 私が「腸」としっかり向き合うようになってから30年になりますが、知れば知るほど、腸というのは奥が深い、優れた器官だと感心します。

 まず、体内の多くの器官は脳からの指令を受けて動きますが、腸は自ら考え、判断することができます。たとえば、腐ったものなどを食べると下痢の症状が起こるのは、「害のあるものから体を守ろう」と腸が判断するためです。

 腸には約1億個の神経細胞があり、「第二の脳」とも呼ばれていますが、私に言わせれば、脳こそが「第二の腸」です。なぜなら、腸は脳が出来上がるよりはるかに昔から存在しており、ほとんどの動物は脳ではなく腸から形成されるからです。

 しかも、情報の伝達や処理に関わる神経系の細胞が最初に誕生したのは、脳ではなく腸だったことも明らかになっています。

 さらに、脳と腸は「迷走神経」と呼ばれるネットワークで直接つながっており、ホルモンや神経伝達物質などの働きを通して、相互に強い影響を与え合っています。この脳と腸の関係を「脳腸相関」といいます。

 脳にとっていいことは腸にとっても良く、腸にとっていいことは脳にも良い影響を与えますが、脳や腸がストレスを受けると、その影響はもう一方にも及びます。緊張するとお腹が痛くなったりするのも、そのせいです。
 

腸の働きは自律神経によってコントロールされている

 腸は、独自の神経と自律神経によって二重にコントロールされており、ぜん動運動(腸管が順次くびれることによって、腸の内容物を前へ押し出していく運動)などは自律神経によってコントロールされています。

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小林弘幸

小林弘幸

小林弘幸(こばやし・ひろゆき) 順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。1987年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科などの勤務を経て順天堂大学小児科講師、助教授を歴任。腸と自律神経研究の第一人者。『医者が考案した「長生きみそ汁」』など著書多数。テレビなどメディア出演も多数。

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腸と自律神経は相関関係にある