第二の脳と呼ばれる腸には1億個の神経細胞があるという。脳とは切り離せない相関関係にあり、身体全体に及ぼす影響も大きい。腸の研究で知られる順天堂大医学部教授、小林弘幸氏の著書『お腹が弱い人のための30秒腸活』(アスコム)から一部を抜粋し、腸の働きの奥深さを紹介する。
【写真】不眠など身体の不調を乗り越え、精力的に活躍する女優はこちら
***
私が「腸」としっかり向き合うようになってから30年になりますが、知れば知るほど、腸というのは奥が深い、優れた器官だと感心します。
まず、体内の多くの器官は脳からの指令を受けて動きますが、腸は自ら考え、判断することができます。たとえば、腐ったものなどを食べると下痢の症状が起こるのは、「害のあるものから体を守ろう」と腸が判断するためです。
腸には約1億個の神経細胞があり、「第二の脳」とも呼ばれていますが、私に言わせれば、脳こそが「第二の腸」です。なぜなら、腸は脳が出来上がるよりはるかに昔から存在しており、ほとんどの動物は脳ではなく腸から形成されるからです。
しかも、情報の伝達や処理に関わる神経系の細胞が最初に誕生したのは、脳ではなく腸だったことも明らかになっています。
さらに、脳と腸は「迷走神経」と呼ばれるネットワークで直接つながっており、ホルモンや神経伝達物質などの働きを通して、相互に強い影響を与え合っています。この脳と腸の関係を「脳腸相関」といいます。
脳にとっていいことは腸にとっても良く、腸にとっていいことは脳にも良い影響を与えますが、脳や腸がストレスを受けると、その影響はもう一方にも及びます。緊張するとお腹が痛くなったりするのも、そのせいです。
腸の働きは自律神経によってコントロールされている
腸は、独自の神経と自律神経によって二重にコントロールされており、ぜん動運動(腸管が順次くびれることによって、腸の内容物を前へ押し出していく運動)などは自律神経によってコントロールされています。