その成田をインターハイの200m個人メドレーで破り、優勝を果たした高山紫妃(武南/スウィン大宮)はまだ高校1年生。バタフライから一気に飛び出す積極性は魅力的。また、全国中学を3連覇した谷本美乃(金岡南中/初芝SS)や、高校生の竹澤瑠珂(武蔵野/東京SC)といった、自由形長距離選手たちにも注目していきたい。
さらには個人メドレーの中学生、佐々木珠南(八戸東中/ウイング八戸)や背泳ぎと個人メドレーを専門とする長岡海涼(東北高校)も記録をどんどん伸ばしている選手である。
大学生ではあるが、1年生の個人メドレー、自由形長距離、OWSで活躍中の奥園心咲(立命館大/枚方SS)や平泳ぎの加藤心冨(早稲田大学/スウィン鴻巣)も注目度は高い。
もちろん忘れてはいけないのは、東洋大のパリ五輪銀メダリスト、松下知之も1年生。2年生の牧野航介も今年の日本学生選手権で自己ベストを大幅更新し、200m個人メドレーでは松下を下して優勝を果たした注目選手。先に挙げた長岡海涼の姉である、長岡愛海(神奈川大学)も1年生ながら日本学生選手権で背泳ぎ2冠を果たした。
まだまだ名前を挙げ足りないくらいであるが、このように競泳界は今、中高生の人材が非常に豊富に育ってきている。
確かにすぐ世界で活躍できる選手ではないかもしれない。しかし、4年後、そして8年後には世界のトップ争いを繰り広げてくれるかもしれない、期待の若手選手たちはこれだけ競泳界に存在するのである。
まさに今、世界レベルの記録を持つベテラン選手たちの存在も確かに大切だ。だが、そこばかりに目を向けてきた結果が、パリ五輪であったのではないだろうか。
村佐は3月にパリ五輪代表を決めてからパリ五輪本番までの4カ月間で、自己記録を1秒以上更新した。平井にしても同様だ。若手選手は、半年もあればガラッとその姿を変える。
4年後、ロサンゼルス五輪でもう一度、強い日本の競泳を取り戻したいのであれば、彼ら若手の存在を何よりも大事にしてほしい。彼らが全力で競泳に、そして自分たちの成し遂げたいことに対して取り組める環境作りをすることが、今の水泳界に必要なことなのではないだろうか。それが結果的に、強い競泳日本を取り戻す近道になるはずだから。(文・田坂友暁)