家島明彦さん(いえしま・あきひこ)/1981年生まれ、教育心理学者。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程学修認定退学。大阪大学キャリアセンター副センター長・准教授(写真:本人提供)
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 PTAには運営方法が旧態依然とした組織も少なくない。改革を進める場合、どのようなことに気を付ければいいのか。PTA会長経験もある教育心理学者の家島明彦さんが解説する。AERA 2024年9月30日号より。

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 教育心理学者の家島明彦さんは、小学校のPTA会長を務めた経験を踏まえ、「丁寧に説明する」必要性を訴える。

「人は新しい変化より現状維持を好む心理があり、これを『現状維持バイアス』といいます。一方、改革派が過激化している場合、『集団極性化』が生じているかもしれません」

 集団極性化とは、集団で行う意思決定が個人のそれよりも極端な結論にいたりやすい心理現象を指す。

「双方に『自分は正しい』『頑張っている』という自負がある。たとえば改革をする側が、『正しいのだから、支持されるはずだ』と問答無用で強行しようとすると、大きな反発を招く怖れがあります」

 どの立場であっても、相手の意図や気持ちに配慮することは重要だという。家島さんが危惧するのは両者の断絶だ。

「『批判』(物事の善し悪しを判断すること)と『非難』(誰かを責めること)を混同した結果、相手を『自分たちがやってきたことや、やろうとすることを否定する存在』と、全否定して敵対視する心理に陥っているケースも少なくありません」

 PTA会長として丁寧な説明を心掛け、「PTAの新時代 ~助け合う&楽しむ~」といったスローガンを作り、ワクワクするような動機付けを行うなど、「改革の手順」を踏んだ。だが、「努力しても、必ず成功するわけではない」という。強硬な反対にあい、挫折したケースも知っている。

「私の場合、校長がサポートしてくれたことも大きかった。学校長や役員、OB・OGの協力は重要で、人的環境に恵まれるかは『運』もあると思います」(家島さん)

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

AERA 2024年9月30日号