このほど拙著『図書館「超」活用術』が刊行されることになりました。
ビジネスをはじめ、日々の課題に取り組み、クリアしていくための「図書館の使い方」を、図書館になじみのない人にもわかりやすく紹介した本です。
……と、この説明を聞いただけで、
「いまどき図書館って(笑)」
と思う人も多いでしょう。
いまやポケットに入る端末で高速インターネットが使える時代です。親切な検索エンジンがあって、質問がズレていても適切な答を探してくれます。
私もご多分に漏れずノートパソコンを持ち歩いて、インターネットを駆使して仕事をしているので、
「ネットがあれば何でもできる」
という気持ちはよくわかります。
なにしろ、分厚い辞書を引いたり、本棚を探し回ったりするより、ネットの方がはるかにラクで速いですから。
ネット情報は不正確だから使えない、という説もよく言われますが、情報の発信元に注意したり、クロスチェックをしたりすれば、さほど心配はいりません。
また調査や研究、論文作成など、専門的な分野では、一次資料の文献に当たることが必要とされるものの、普通の仕事で、なかなかそこまで求められることはありません。
「情報はネットで充分」というわけですね。
しかし、本当に「充分」でしょうか?
少しでもいい成果を得ようと、もがいているビジネスパーソンにとっては、そうではないでしょう。
「充分」とは、欠点や不足がないことであって、やや消極的な考え方です。それにワクワクしません。
せっかくなら、もっと新しいことを考えるためのヒントになる情報を得て、仕事の成果につなげていきたい。
本書は、そんな「充分以上」を目指す人のために書きました。
図書館という「場」をうまく使えば、それまで想像もしなかったような情報に出会うことができ、考えられなかったことが考えられるようになる。
これこそインターネットではできない図書館の強みだと私は考えています。
インターネットのキーワード検索は、目的を持った調べ物には便利です。しかし、的確なキーワードがなければ、「答」は得られません。仕事がなぜかうまくいかないとき、その“壁”になっているものをうまく言語化し、ちょうどいい情報が得られるような「キーワード」が思いつくでしょうか? 「30代 仕事 悩み」で検索しても、「ジョギングを始めろ」とか、自己啓発系の記事が出てくるのがオチですね。
このように「課題」がなにかわからない状態でも、図書館に行けば、必ずヒントが得られます。
大量の本を使うことで、「自分がどんな問題を抱えているか」「どんな情報を求めているか」が、まったくわからないまま、解決に乗り出すことができるのです。
もっとも簡単なやり方を挙げておくと、図書館を歩き回って「なんとなく気になる本」をかき集めてみる、という方法があります。これを本書では「山積み法」というネーミングで紹介しました。
「なんとなく気になる」というのは、いわば無意識が求めている情報です。そういった本を集めて、テーブルに積んでみれば、ジグソーパズルが埋まるように課題が浮かび上がり、解決への糸口が見つかるのです。
図書館には、哲学、自然科学、社会科学から、文学、芸術まで、森羅万象についての本があります。歩き回って本棚を眺めるのは、地球上を自由に飛び回るようなものとも言えるのです。
図書館というと「本がタダで借りられる場所」と思われがちですが、本当は、成果を求められるビジネスパーソンこそ足を運ぶべき情報空間なのだ、と本書では書きました。
社会に目を移せば、現在はどんどん「これまでのやり方」が通用しなくなっています。
残念ながら、インターネットは新しいことを考えるのには向いていません。ネットは、そのサービスの普及とともに、誰もが同じキーワードの検索で同じ情報に触れ、同じようなことを考える、という不毛なものに変質してしまったからです。
図書館を使うことで、ひとりひとりが知的に自由になり、自分でものを考え、生き方を自己決定していくことができる――私はそう考えています。