「今日は10点取られても最後まで投げさせるつもりだった」と心を鬼にした金本監督は、藤浪の投球数が161球に達した8回で代えたものの、当時流行語になった広島・緒方孝市監督の“神ってる”をもじり、“鬼ってる采配”と報じられた。

「正直、予定では10勝に行っていてもおかしくない投手。それがチームの借金につながっていると言ったら、全部を背負わせ過ぎかもしれないけど、それくらいの責任は感じないといけない立場」とエースの自覚を強調する指揮官に、藤浪も「いきなり先頭に四球で、一番やってはいけない形で先制点を献上した。自分の弱さだと思う」と反省したが、同年は7勝11敗に終わり、入団1年目から3年連続記録した二桁勝利も途切れた。その後も低迷が続き、チームも18年に最下位に沈んだことから、「藤浪を潰したのは金本監督」の批判も出た。

 矢野耀大監督時代の20年9月5日の巨人戦でも5回途中11失点と晒し投げの屈辱を味わった藤浪は、長いトンネルを経て、今季メジャーで復活を遂げたが、「阪神時代にもっと活躍してほしかった」と惜しむファンも多いはずだ。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

著者プロフィールを見る
久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

久保田龍雄の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
「昭和レトロ」に続いて熱視線!「平成レトロ」ってなに?「昭和レトロ」との違いは?