西武入団2年目の松坂大輔に11点取られるまで続投させたのが、東尾修監督だ。

 00年6月10日のロッテ戦、松坂は初回に諸積兼司を遊ゴロエラーで出塁させたのをきっかけに、3安打を浴びて2失点。その後は5回までゼロに抑えたが、1対2の6回、福浦和也に中前安打を許し、犠打と死球を挟んで本西厚博に外角への145キロを左中間に2点タイムリー三塁打されると、気持ちがプッツリ切れてしまった。

 連続四球と犠飛でさらに1点を失ったあと、松坂は石井浩郎と立川隆史に2ランを浴びるなど、大炎上。打たれても打たれても続投させた東尾監督も、この回だけで9点を失ったところで、ようやく交代を命じた。

 プロ入り後ワーストの1試合11失点を喫した松坂は、「カーッとなっていて、何が何だか覚えていない」と表情もうつろ。続投の理由を東尾監督は「三塁打で切れちゃダメなんだ。ベンチは皆、勝つためにやっているんだから。中途半端で代えてもダメ。打たれて将来勉強になることもあるしね。2年目でプロの厳しさを知ればいいんだ」と説明した。

「これは新しい自分をつくるための試練だと思います」と師匠の檄を前向きに受け止めた松坂は、6月30日の日本ハム戦で2安打完封勝利を記録するなど、2年連続最多勝に輝き、翌01年も高卒新人史上初の3年連続最多勝を達成した。

 だが、チームは毎年あと1歩で優勝を逃し、東尾監督も3年連続V逸の01年限りで辞任。松坂入団時に自身の通算200勝の記念ボールを贈り、「君が200勝したら、そのボールをくれ」の約束をかわしたエピソードで知られる東尾監督だが、師弟の二人三脚で優勝の美酒を味わうことはできなかった。

 若きエースに奮起を促すための晒し投げが裏目に出たのが、阪神・金本知憲監督だ。

 2016年7月8日の広島戦、先発・藤浪晋太郎は3回までに5点を失ったが、金本監督は続投を命じ、すでに131球を投じていた7回にも、代打を送らず、そのまま打席に立たせた。

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批判も出た藤浪晋太郎の「161球」