翌12年は6月8日の巨人戦で2年ぶりのセーブを挙げるも、8月まで登板15試合の1セーブ、4ホールドと出番は多くなかった。

 そして、シーズン終盤、日本ハムとV争いを演じるチームの6番目の先発候補として、9月2日のロッテ戦で当時NPB最遅タイ記録だった通算287試合目にして初先発。変化球を有効に使って自己最長の4回を投げ、3安打1失点でチームの勝利に貢献した。

 だが、2度目の先発となった同9日の楽天戦では3回4失点と試合を作れず、負け投手に。これがラスト登板となり、10月2日に現役引退を発表した。

 マイケルと並ぶ通算287試合目で初先発を記録したのが、オリックス時代の田村勤だ。

 阪神時代の93年に22セーブを記録した変則左腕も、オリックス移籍2年目の02年は自分の思うような投球ができず、引退を決意。花道登板となった10月14日の日本ハム戦では「12年やってきて1度はやってみたいと思っていた」先発のマウンドに立った。

 1回表、先頭打者の森本稀哲を128キロ直球で空振り三振に打ち取った直後、10歳の長女から花束を贈られたかつての“伝説守護神”は「これだけの場面を作ってもらえると思わなかったので、ありがたかった」と感謝しながらマウンドを降りた。(文・久保田龍雄)

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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