8日放送のNHKスペシャルは「藤井聡太VS.伊藤匠 AI時代 将棋の新たな地平」と題して、叡王戦5番勝負の密着ドキュメントやインタビューが放送される。番組放送に合わせ、藤井聡太さんの15歳のときに取材した記事を秘蔵写真とともに改めて紹介する。(この記事は2017年7月24日に配信した内容の再掲載です。年齢や肩書などは当時のままです)
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いま、日本中に巻き起こっている“藤井フィーバー”。しかしそんな騒ぎなど、本人にはどこ吹く風。自宅リビングで、スマホ片手に考えるのは、いったいどんなことだろうか。
愛知県瀬戸市の自宅。一家だんらんの場となる14畳のリビングダイニングルームに足を踏み入れて、拍子抜けした。この部屋が、快進撃を続ける15歳の「研究室」だった。
「学校から帰った後は、ソファで横になりながら、スマートフォンで公式戦の中継を見ることが多いです。夕食の後はパソコンの前で研究します。一日の将棋の勉強時間は、3時間ぐらいですね」
棋士が研究する際は、集中するために静かな自室にこもることがほとんどだろう。しかし、史上最年少で将棋の棋士になった逸材は違う。4歳上の兄が音楽をかけることもあるが、お構いなしだという。
6月、史上単独1位の公式戦29連勝を、デビューから無敗のまま達成するという偉業をやってのけた。将棋そのものの注目度も急上昇しており、各地の将棋教室には、入会の問い合わせが殺到している。
中学生でプロ入りしたのは史上5人目だが、デビュー早々、ここまでの勝ちっぷりを見せた棋士はいなかった。棋士間でも、「タイトル戦に登場する日は、そう遠くないだろう」と目されている。
20歳の時の自分のイメージを問うと、しばらく考え込んだ後に、こんな言葉が返ってきた。
「今の自分とは比べものにならないぐらい、強くなっていたいです」
「底知れない」とは、まさにこのことだ。
※週刊朝日 2017年7月28日号