良質な睡眠をとるためには日中の行動を工夫する必要があるという(写真:Getty Images)
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 朝起きた瞬間からもう疲れている……。そんな「朝バテ」に悩む人も増えた。酷暑に体力を奪われ、在宅勤務で運動量は激減。職場の人手不足で業務や責任は増えて疲れはたまるばかり。こうした新時代の疲労に打ち勝つためにはどうすればいいか。「環境」「睡眠」のキーワードから、具体的なノウハウを取材した。AERA 2024年9月9日号の「最強の回復法」特集より。

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【環境】

 休暇をとってホテルでリフレッシュしたつもりでも、かえって疲労がたまることがある。

 東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身医師は言う。

「枕が変わると眠れないと言われるように、どんなに豪華で快適だとしても、初めて泊まるホテルで1泊目から安眠するのは難しいです」

 初めての場所で落ち着けないのは“本能”だという。

「安全を確認できない状況では、動物は命を狙われる恐れがあります。安全で安心できる空間は深い睡眠を得る上で必須の環境なのです」

 理想的な空間環境とは?

「安全・安心と並んで重要な要素が快適性です。大切なことは、身体ではなく脳にとって最適な快適空間を作ることです」

 夏は暑さで脳温度が上がるため深部体温を調節する自律神経中枢が酷使される。つまり、脳の疲れの蓄積が夏バテを起こすという。

「脳にとって快適な温度は23、24度と万人共通です。ただ、筋肉量が少ない日本人は体にとっての快適温度は平均して25~27度と高め。身体に合わせた温度こそが脳の疲労を起こすのです」

 そのためにはエアコンを使って鼻から冷たい空気を吸って、脳を冷やす。一方、体は冷えないように頭寒足熱を徹底し、夜は一年中、冬用布団を使う。

「自然」もキーになる。

「音は危険を知らせるシグナルですから、自然音がかすかに聞こえる状態に安心します。そよ風が吹いて、風の音がして、少しにおいもする。自然の揺らぎがある状況に癒やされます」

夕方にスクワット10回

 では、部屋で波の音を流せば、癒やされるのか?

「波の音がするのに、マンション内の白い壁紙に囲まれていては五感が一致しないため違和感を覚えます。違和感は、安心できない環境を意味します」

 とはいえ、生活の中で自然を感じるのは容易ではない人も。

「コンクリートの建物では、波の音よりむしろエアコンの音の方が自然で安心できることが分かっています。『自然音』は、その場所にふさわしい音のことを言うのです」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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