猛暑で、体のだるさを感じたり、食欲不振や不眠に悩む人も少なくない(撮影/写真映像部・和仁貢介)

【睡眠】

 良質な睡眠が取れているサインは、寝る前にあくびが出るほど自然と眠くなる状態だ。

 作業療法士で、睡眠外来の経験も豊富な菅原洋平さんによると、夜に眠くなるリズムを作るためには、日中の行動を工夫する必要がある。ポイントは二つ。「朝の光を浴びること」「夕方の体温を1日の最高温度にすること」だという。菅原さんは言う。

「朝、目の奥の網膜に光が当たると、体内時計がスタートして16時間後に眠たくなります」

 朝の光の浴び方は、窓から1分間、顔を出すだけ。窓から顔を出せない人は、窓際1メートル以内で5~10分過ごすだけでもいい。窓際で朝の支度をするだけでOK。タイミングは起床後できるだけ早く、遅くても目覚めて4時間以内にする。窓際にベッドを置いて遮光カーテンを開けて眠れば、目覚める前からリズムを修正できる。

 もうひとつの「夕方の体温を上げる」目的は、夜に体温を下げて眠たくするためだという。

 体温の上昇に伴ってパフォーマンスが上がる。朝は低かった体温が徐々に上がり、起きて11時間後を境に放熱して、パフォーマンスも下げる。

「エアコンが利いた部屋で在宅ワークをする人は、夕方に放熱せず、体温が高いままだから夜になっても眠くならない」

 そんな人は夕方、スクワットを10回しよう。1分程度の運動で、汗をかき、放熱する。運動強度は軽くていいが、頻度が大事。週4日以上行うと、リズムが整うようになる。

 睡眠時間や寝返りの振動を計測するウェアラブル端末もある。

「睡眠スコアが算出されますが、日中の活動と照らし合わせるとよりデータを生かせます」

 ウェアラブル端末で利用したいのが「心拍数」だという。

「起床時の心拍数が低いことが、質の良い睡眠の指標です」

 例えば、出張から帰ってきた日、起床時心拍数が高かったら、疲れがたまっているとわかる。3日後の朝、心拍数が下がっていたら、3日間休めば体が回復するとわかる。

 枕元にスマホを置くだけで、睡眠データを記録できる睡眠アプリも人気だ。話題なのが、睡眠を計測・記録するゲームアプリ「ポケモンスリープ」だ。

「ポケモンスリープを使ってよかったと言う患者さんは、ポケモンスリープをスタートすると画面が自動で暗くなるため、スマホから離れられるメリットを感じています。生体リズムを整えて良質な睡眠を取った上で、適切な食事や運動をプラスしていきましょう」(菅原さん)

(編集部・小長光哲郎、井上有紀子)

AERA 2024年9月9日号より抜粋

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