9月も中盤戦に突入しました。「AERA dot.」が最近掲載した記事のなかで、特に読まれたものを「見逃し配信」としてお届けします(この記事は8月15日に「AERA dot.」で掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。
* * *
2018年の事故で両下肢完全まひと診断された、アイドルグループ「仮面女子」の猪狩ともかさん(32)は、これまでSNSで多くの誹謗中傷を受けてきた。今年7月中旬にもXで「歩ける疑惑」「ビジネス下半身不随」など信じがたい中傷を受けたが、それに毅然と対応し自らの思いを発信した。なぜ猪狩さんは誹謗中傷に“立ち向かう”のか。どうやって心の平穏を保っているのか。猪狩さんに「心のうち」を聞いた。
Xに誹謗中傷コメント
7月12日、猪狩さんは、「心は女性」とする男が女装して女湯に入り逮捕されたというニュースについて、「心が女性なら何故〝男性器のついた人が女湯に入ってくる恐怖〟を理解できないの…?」とXに投稿した。これに対して、あるユーザーから「それはビジネス下半身不随の人が本当に車椅子でしか生活できない人の気持ちわからないのと同じじゃない?」という信じられないコメントがつけられた。
人の尊厳を傷つける完全な誹謗中傷だが、猪狩さんはⅩでこう“反論”した。
「車椅子に座ってること以外は普通の見た目の身体だから、『本当は脚動くのかも』と思う人がいても仕方ないとは思ってる。動いたらどれだけ嬉しいか…!!『有名になりたくてわざと事故に遭った』と言われたこともあるけど、何かと引き換えに車椅子に乗らないといけない生活なんて絶対したくないです」
誹謗中傷した側に「いい思い」をしてほしくない
心ない誹謗中傷をしてくる他人など無視すればいい。相手をブロックして見えなくすればいい。そう考える人も多いはずだが、なぜ猪狩さんは相手に自分の考えを発信しようとするのか。猪狩さんはこう話す。
「負けず嫌いっていう性格もあると思いますが、単純に悔しいじゃないですか。私がバカにされているというより、私のことを支えてくれる周りの人や障害があってもアイドルになりたい人をバカにされているような気がしたんです。その人をブロックして、見たくないものを排除するのもひとつの選択肢だとは思います。でも裏を返せば、相手には自分が“排除された側”に映るかもしれない。学校でのイジメもそうですが、イジメられた側が転校したりするのはおかしいですよね。誹謗中傷した側が『いい思い』をしてほしくないですし、そういうことは許せないんです」