「リハビリの成果」「褒め言葉として受け取る」

 前述の「ビジネス下半身不随」以外にも、「歩ける疑惑」など猪狩さんを傷つけるのが目的と思われる投稿は一定数ある。

 7月16日、あるXのユーザーは猪狩さんが西武のユニホームを着ている写真を引用し、

 「下半身不随の肩(ママ)の足は、びっくりするほど細いので、それらと比較して健常者の足に見えてしまっている。『実は歩ける』疑惑の出発点」と投稿した。それに対して猪狩さんは「日々のリハビリの成果だと思います」ときっぱりと反論。医師からも「脚に筋肉がついたね」と言われるといい、「健常者の脚に見える」は褒め言葉として受け取る、と大人の対応もみせた。

障害を持つ人がSOSを発信することも大切

 SNSでひどい中傷をされようと、猪狩さんはこれからも発信を続けていくと話す。

 「障害がある人になぜひどいこと言えるかというと、たぶん障害がある人と深く関わる機会がなかったからだと思うんですよ。だから、障害と付き合って生きていかなければいけない方たちは、私は少し開き直って他の人に頼ってもいいと思うんです。車いす押してくれませんかでもいいし、何か持ってほしい、でもいいと思います。自分のSOSをしっかりと発信していくことも大事だと思うんです」

 そして最後にこんなエピソードを話してくれた。

 「この前、娘さんが同じように下半身が不自由で車いすで生活しているという男性に声をかけられ、『娘がとても応援していて、猪狩さんのことを目標に頑張っています』と言われたんです。こういう言葉が、私が頑張れる原動力になっています」

 誹謗中傷から逃げず、発信を続ける猪狩さんの姿は、同じ社会で生きる誰かの“原動力”にもなっているだろう。

(AERA dot.編集部・小山歩)

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