デロイトトーマツの社員有志の勉強会。男性だけではなく、女性、外国籍など様々な背景のメンバーが参加している(写真:デロイトトーマツ提供)
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 男性中心に物事が決まる、雑務は女性に振るなど日常にあふれるオールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)。その文化を変えようと動き始めたある企業の取り組みを紹介する。AERA 2024年9月2日号より。

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男性中心のルールの中で、居心地が悪いのは女性だけではない。AERAが8月に実施したアンケートでは、男性たちからこんな意見が寄せられた。

「男性は仕事という価値観を周囲が押し付けてくるように感じる」(35歳、神奈川県、会社員)

「子どもが調子が悪くて迎えに行ったり、看病したりするために早退、休もうとした時に『奥さんに行ってもらえ』と言われる」(62歳、静岡県、会社員)

 職場にある男性側のモヤモヤも「男は仕事」という価値観があるからだ。

 デロイトトーマツグループのパートナー栗原健輔さん(41)は22年から、社内で女性活躍を考える勉強会を月に一度、開いてきた。きっかけは、栗原さん自身が、社内でマイノリティーになったことだった。

「私自身、多数派の男性として何不自由なく過ごしてきましたが、家事・育児を夫婦で半々にして気づきました」

自分が動かなければ

 妻はフルタイム勤務で、2人の娘がいる。保育園のお迎え担当の日は、定時になったら、ミーティングの途中でも「すみません、帰ります」とパソコンを閉じて、電車に飛び乗って保育園に向かう。仕事は終わらないし、本当に大変だった。

「これを共働きの人たち、なかでも育児家事の中心を担わされがちな女性はずっとやってきたのに、今も全然楽になってないと感じました」(栗原さん)

 どうすれば共働き家庭の夫婦が、キャリアを諦めずに済むか。そう考え、J-Winの勉強会に参加した。そこで、講師にこう問いかけられたという。

「経営戦略としてダイバーシティーを進めているにもかかわらず、どの会社もダイバーシティー担当は女性。女性のためだと言いながら、男性は協力せずに、高みの見物をしていませんか?」

 マジョリティー側の男性がリードしなければ進むわけがない。

 自分が動かなければ。栗原さんは、社内の男性たちに声をかけ社内勉強会を始めた。

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男性の行動を変える10カ条