好判断があっても失敗が目立ってしまう
かつて、パ・リーグの球団で走塁コーチを務めたプロ野球OBは複雑な表情を浮かべる。
「三塁コーチャーは本当に判断が難しい。一つとして同じシチュエーションがなく、状況判断でセンスが問われる部分がある。ギャンブルではなく、根拠があって判断していますが、コーチャーの中でも積極的に本塁突入させるタイプの人には批判の矛先が向きやすい。井出コーチの好判断で得点を奪ったケースもあるのですが、失敗すると目立ってしまう」
結果論になってしまうが、防がなければいけないミスもあった。7月13日の日本ハム戦(エスコンF)で、1点差を追いかける4回無死満塁の局面。正木智也が左前適時打を放つと、三塁走者に続き、二塁走者の近藤健介も勢いよく三塁を回った。井出コーチはいったん腕を回して近藤に本塁突入を促しながら、途中で判断を変え、両手を広げてストップを指示。近藤は慌てて三塁に戻ろうとしたが、挟殺プレーでタッチアウトとなった。本塁突入を制止するなら井出コーチはもっと早く近藤にアクションを示す必要があった。全力疾走から急ブレーキをかけることで足に大きな負荷が掛かる。近藤がケガをしなかったことは一安心だが、チームで共有しなければいけない反省材料になっただろう。
監督が「こんな狭い球場で」と苦言
今年は他球団でも三塁コーチャーがやり玉に上がっている。
阪神の三塁コーチャーを務める藤本敦士内野守備走塁コーチ。6月18日の日本ハム戦(甲子園)で、5回1死満塁から原口文仁の右邪飛で三塁走者・森下翔太をタッチアップさせなかった。捕球した万波中正が力強い送球を投げられるような体勢ではなかっただけに、球場からため息が漏れた。
6月30日のヤクルト戦(神宮)では1点差を追いかける9回2死一塁で佐藤輝明が左翼フェンス直撃の長打を放つと、一塁走者・植田海に本塁突入を指示。だが、クッションボールを処理した左翼・並木秀尊と遊撃・長岡秀樹の中継プレーで余裕を持って本塁タッチアウトに。報道によると、岡田彰布監督は試合後、「信じられへんわ。何でも行けじゃないやろ。こんな狭い球場で」と藤本コーチの判断に苦言を呈した。