役柄はもちろん、舞台の趣も前作とはかなり異なる。A・デュマの冒険活劇に、鉄仮面伝説なども織り交ぜながら、人間関係や心理が掘り下げられている。

「ほんまに歌あり殺陣あり、ちょっと笑いもあり。ダルタニャンが三銃士に出会って、最愛の人に出会って、成長していく過程が描かれている。感動もできて、友情もあって、すごい熱い作品なんでね。口ずさんでしまうくらいいい曲も多くて、ミュージカルを見たことのない人にも、華やかで楽しんでもらえるかなと思います」

 演じるダルタニャンは、末澤曰く「銃士を目指して田舎からパリに出てきた」「本当に純粋無垢な」青年。「命よりもプライドが!」と叫んで三銃士に次々と決闘を申し込み、友情や正義に熱く譲れないものを持つさまは、オリジナル曲「PRIDE」の歌詞に強い共感を抱くと語り、噛みつくようなツッコミで「狂犬」の異名を取り、ライブでステージを熱く駆けまわる末澤と印象が重なる部分もあるが、当の本人は「いや、全然。ぜんっぜん似てない」と笑う。

「特に性格。パフォーマンスでは熱いかもしれんけど、俺は日常はけっこうドライなんで、ダルタニャンとはだいぶ違いますね。一目惚れとかもしないタイプだと思うので。ダルタニャンの恋は、だいぶ唐突なんでね。助けてもらったとしても、あれはないんちゃいます?(笑)」

譲れないことは伝える

 本人は否定するものの、かつて、自身の歩んできた道を顧みて、「間違いなくもっと近道はあった」と語っていた末澤と、利する側につかず正義を守り抜くダルタニャンの、例えば「時に僕らは笑われる バカだと人は言う」という歌のフレーズに、重なる部分はないだろうか。

「それはありますよ。もうちょっとうまいことやれば円滑に進むんやろな、みたいなのは、いまもあります。絶対こう言ったほうが、何も起こらずに平穏に済むんやろなと思ったりしますけど、円滑に進めばいいってもんでもないなと俺は思ってるんで。ここは譲れへんな、みたいなときは、言いますね。ま、相手はだいたい大人です(笑)。メンバー間やプライベートではあんまりない。

 仕事だからこそというか、自分の人生やし、俺らのグループやし、すべてを人に決められたくないので。もちろん正しいと感じるときはそれでいいんですけど、自分が納得いってなかったら、言いますね。自分たちのために、って感じですね」

(編集部・伏見美雪)

【後編はこちら】末澤誠也「しんどさもあってよかったな、って」 30歳の誕生日をリミットと決めていた

AERA 2024年9月2日号より抜粋

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