いくら患者さんたちのためになる術式を開発しても、志をともにする仲間たちから評価されたとしても、それが時として旧態依然とした勢力からは認められず、排除の方向に向かわされることもあります。

 新たな発見や開発は、それまで既得権益を有してきた人たちにとっては邪魔な存在でしかなかったりするのです。でも、医師が対峙するべきは、自らの地位を得るための権力闘争などではなく、目の前にいる患者さんです。

 私が「完全内視鏡下心臓手術」を行ったことをメディアが大きく報じてくれたことは、その思いを後押ししてくれました。
 

活躍した時、次の一歩を

 ただ、人は満足感を得ると心が満たされます。

 満たされたとき、それは一種の快感としてそこに浸り続けたくなります。

 これだけ大きなプロジェクトを成功させたんだ。こんないい取引先との商談をまとめたんだ。いままでにない事業を立ち上げて軌道に乗せたんだ……。

 すばらしい活躍をしたときこそ、すぐに次の一歩を踏み出しましょう。

 心が満たされた状態を続けていると、そこから抜け出せなくなり、いずれ周りからの期待とのギャップに心が苦しむことになります。 

 大きなチャンスをつかんだとき、成功をつかんだとき、それは心が次の成長のステップに進むための準備が整ったということです。

 その機会を逃してはいけません。

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渡邊剛

渡邊剛

わたなべ・ごう/心臓血管外科医。ニューハート・ワタナベ国際病院総長。2019年から2023年まで5年連続ロボット心臓手術件数世界一を記録するなど、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた心臓手術の世界的権威。2010年より14年連続で「The Best Doctors in Japan」に選出中。

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