山崎元さん
山崎元さん
この記事の写真をすべて見る

 株価が乱高下する中、新NISAを始めて戸惑いを覚える人も多い。2024年1月1日に亡くなった経済評論家の山崎元さんは、生前“オルカン”(「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」)を勧めていたが、投資指針についてどう考えていたのか? 闘病中に語られていた言葉を書籍『がんになってわかった お金と人生の本質』から抜粋して紹介する。

*  *  *

お金に感情を振り回されない

 経済評論家として、これまで多数の記事を執筆し、書籍を上梓してきたが、私がお金について言いたいことは非常にシンプルだ。

 それは、お金に感情を振り回されず、冷静に向かい合って欲しいということである。

 本当のことを言うと、私はお金に興味がない。純粋に仕事の対象だからだ。将棋の棋士が駒を懐に大事にしまい込まないように、私も商売道具であるお金に特別な執着心を持っていない。別の言い方をすれば、自分のお金というものが面倒と言えるかも知れない。やりたいことのために、呼吸をするようにお金を使って、足りなくもなく持て余しもせずとなれば、それが理想だ。

 経済評論家をしながらも、お金の増やし方の細かなノウハウを提供していたわけではない。どちらかというと、金融商品の運用の仕組みを分析して落とし穴を分析したり、手数料が無料の証券会社のからくりを見破ったり、そういうことを面白がって評論家商売をしてきた。

 日経平均株価が3万円を超えそうなどと市況に関するコメントをすることはあるが、それは評論家としてのサービスの範囲だと考えてきた。個別銘柄まで言及してしまうと自分の狙ったポジションとは違ってしまうので、そこまでは踏み込まない。

 様々な立ち位置がある経済評論家の中で、私が目指したのは、「発言内容は厳しいけれど正確なことを指摘する山崎さん」。

 そこで競争力を持っていれば、家族を養うくらいの収入は得られるだろうという目論見だった。難しい金融理論などの本も書いてきたのは、自分の言葉を信頼して貰うバックグラウンドを築くためでもあった。

 経済評論家人生の中での反省点もある。活動開始から5〜10年くらいの頃までは、運用のプロである機関投資家の運用方法を簡略化すれば、個人も理想的な資産運用ができると考えていた。しかしこれは間違いだった。

次のページ