山崎元『がんになってわかった お金と人生の本質 』(朝日新聞出版)
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 なぜかというと、プロの運用法が必ずしも正しいわけではないこと、さらに、プロと個人では運用についての事情が根本的に違うからだ。日本の年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、分散投資している運用資産のアセットアロケーション(資産配分)の一部が値上がりすると、それを売却して、全体のバランスを取り直すリバランスを行っている。GPIFは国内外の債券・株式をそれぞれ25%ずつ保有しているが、個人がそれと同じことをする意味があるのだろうか。

 決められた時期にある程度のパフォーマンスを出すことが求められるプロに比べて、個人の時間軸や投資の目的は様々だ。仕事の状況で、稼ぎが増えるかも知れないし、減るかも知れない。病気になって働けなくなってしまうかも知れないし、反対に、労働収入を得られないのに長生きしてしまうかも知れない。あるいは、家族との関係も変わるかも知れない。

 個人でも、資産と負債の管理は重要だが、それはプロと同じ考え方をしていてはうまくいかない。それが分かってからは、私は、プロ面をして個人投資家に対して上から目線で運用を説く人物を否定するようになった。

運用に思い入れを持ち込まない

 個人投資家が資産運用にあたって意識するべきことは何か。それはお金に感情を込めず、合理的な考え方で向き合うことである。お金は、生活や娯楽のための手段に過ぎないのだから、誰にとっても価値は同じ。新卒社会人や退職者、富裕層など属性によって運用スタイルは異なると思ってしまいがちだが、そうではない。異なるのは、投資に回せる絶対的な金額と背負うことができるリスクだけだ。

 運用する商品は全世界株インデックスファンドだけでいい。値動きしても一喜一憂しない程度の金額をそこに投入したら、あとは自分がどう稼ぐのか、運用以外の部分を大事にしよう。

 これは、他の趣味を持とうということではなく、運用に思い入れを持ち込むのはやめようということである。運用を必要以上にありがたがっていると、道を見誤る。例えば、NISA(少額投資非課税制度)の新制度の「成長投資枠」の「成長」という言葉に引きずられて、個別株を買ってしまうのは大きな誤りだ。

 もちろん、リスクの範囲内で趣味として個別株のポートフォリオを持っているのはかまわないが、そうでない大多数の人は成長投資枠でも全世界株のインデックスに投資をしていれば十分だ。

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