ジャック・アントノフさんのソロ・プロジェクトであるBleachers(ブリーチャーズ)

 ジャック自身が「アルバムの核になっている曲」という「Me Before You」は、人生が大きく変わる時期の葛藤を美しく描き出したナンバー。そのほか華やかなロックナンバー「Modern Girl」、80年代風のシンセポップ「Jesus Is Dead」など、色彩豊かなポップスが楽しめる作品に仕上がっている。

「面白いなと思うのは、このアルバムは聴く人によってぜんぜん印象が違うというところ。もし『明るいアルバムだ』と感じたのなら、その人がハッピーだからじゃないかな(笑)。僕自身はあまり考えすぎず、感覚的に作っているから、〈どうしてこういう曲を作ったのか?〉と聞かれても上手く答えられない。でも、人の感想を聞いたり、こうやって質問されることで〈自分にも喜びを味わいたい気持ちがあって、暗闇の向こうに出て行こうとしているんだな〉と気付かされるんだよね」

ジャック・アントノフさんはアメリカ・ニュージャージー州出身(撮影/今村拓馬)

〈ヒットさせよう〉と思って作っても絶対に良い曲にならない

 また、生まれ育ったニュージャージー州の風土や文化も、彼の音楽に大きな影響を与えているという。特に同郷のブルース・スプリングスティーンへの愛着はかなり強いようだ。

「すごく影があるんだけど、そこに秘められた希望みたいなものを感じる。それが自分らしい音楽だと思うし、それは僕自身がニュージャージーで聴いてきた音でもあるんだよね。ブルース・スプリングスティーンやEストリートバンドは、自分たちの価値観を世界に証明してみせた人たち。彼らはヒーローだし、自分のなかにもしっかり刻まれてるんだ」

 前述の通り、世界的なアーティストの作品に数多く関わり、高く評価されているジャック。ヒット作を次々と生み出す手腕は「ブリーチャーズ」でも生かされているのだろうか?

「いろんなアーティストと曲を書いたり、楽曲を提供した経験が創作のインスピレーションになることは当然あるだろうね。だけど〈ヒットさせよう〉と思って作っても絶対に良い曲にならないし、頭デッカチになるのもよくないと思っていて。トレンドを気にした瞬間に列のいちばん後ろに付くことになるし、結局、自分自身の場所を大事にして、自分の中から出てくる音楽を作るしかない。それに世の中の人が同調する、あるいは“しない”というだけの話なので」

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音楽が社会に与える影響