テイラー・スウィフト、ラナ・デル・レイ等のプロデュースを手掛け、グラミー賞計10度の受賞経歴を持つシンガー・ソングライター/プロデューサー、ジャック・アントノフさん(撮影/今村拓馬)
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 テイラー・スウィフト、ラナ・デル・レイ、The1975など、世界的アーティストの作品を手がけてきたプロデューサー、ジャック・アントノフ。グラミー賞「最優秀プロデューサー」部門を3年連続で受賞するなど輝かしいキャリアを持つジャックは、自身のバンド、ブリーチャーズとしても活動している。

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 音楽イベント「SUMMER SONIC 2024」に出演するため9年ぶりに来日したジャック・アントノフに、新作アルバム「ブリーチャーズ」のテーマ、そして、創作に対する姿勢を聞いた。

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 テイラー・スウィフトのアルバム『ミッドナイツ』をはじめ、ラナ・デル・レイの『ディド・ユー・ノウ・ザット・ゼアズ・ア・トンネル・アンダー・オーシャン・ブルバード』、The 1975の『外国語での言葉遊び』などの大ヒット作をプロデュースしてきたジャック・アントノフ。

 自身がボーカルをつとめるバンド、ブリーチャーズの最新アルバム「ブリーチャーズ」のテーマは“トリビュート・リビング”(人生への賛辞)だという。10代のときに妹を病気で亡くしたこと、ドラッグに手を出し統合失調症になりかけたこと、そして、音楽家としての成功や俳優マーガレット・クアリーとの結婚。本作「ブリーチャーズ」には、彼の人生に起きた出来事が色濃く反映されている。

「いろいろな喪失感を味わってきたからね。それでも前に進もうとするんだけど、後ろからゴムバンドで引っ張られているような感覚もあって……。確かにいくつかの成功を収めたし、大切な人にも出会えたんだけど、それでも〈まだうまくいってない〉と感じている自分もいる。そういう自分を見つめて曲を書くことにとても興味があるんだ。うまく回らない車輪に油を差すように、なんとか自分を理解しようと努める。そのこと自体が曲作りにつながるんだと思う。そうやって作った曲をバンドで鳴らすことで、ただの暗い曲にならないで済むんだよね。今回のアルバムは、そういう流れだったんじゃないかな」

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森朋之

森朋之

森朋之(もり・ともゆき)/音楽ライター。1990年代の終わりからライターとして活動をはじめ、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。ロックバンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージック全般が守備範囲。主な寄稿先に、音楽ナタリー、リアルサウンド、オリコンなど。

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