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「洗濯機がまわっているのをずっと見てしまう」、そんな「フェチ」の人々がいるのをご存じだろうか。「癒やし」を求めて30分以上も見続けたり、洗濯機を「酒のつまみ」にしたりする人もいる。何を隠そう、記者もその一人だ。いったい、洗濯機の何が人の心をつかむのか。

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「洗濯機動画」でハイボール

 夜に1人で訪れるコインランドリー。料金を入れ、スタートボタンを押すと、ドラム式洗濯機が厳かに動き始める。

 大抵の人はここでコインランドリーを出て、自宅や近くのコンビニなどで時間をつぶすのだろう。だが、記者にとっては、ここからが至福の時間だ。店内の椅子に腰を掛け、ただ、まわる洗濯機を眺める。「洗い」から「脱水」まで、全ての工程が終わるまで、見守る。洗濯物がぐるぐると回転する様子や時折聞こえる水の音、「ゴー……ゴー……」という一定のリズム、どれをとっても心地いい。

 できれば一杯やりたいくらいだが、コインランドリーは飲食禁止だ。自宅に戻ってから「洗濯機」動画をYouTubeで流し、ハイボールを飲む。さきほどのコインランドリーの余韻も合わせると、なかなか良い。仕事で感じていたイライラや人間関係の悩みも、この時間だけは、スッと気持ちが楽になる。

 引かないでほしい。この「洗濯機」カタルシス、記者の特殊な性癖というわけではないらしい。洗濯機に魅了されている人は意外と多いようなのだ。

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洗濯機に向かって上司の悪口

 関東で大学職員として働くAさん(40代)もその一人。自宅では、2日に1度洗濯機をまわすが、そのたび立ち止まり、数分間、洗濯機の「回転」を見つめる。

「あの回転を見ていると、自分の子どもの頃を思い出します。両親が洗濯機をまわしている姿が思い浮かんできたり、ノスタルジックな気持ちになったりして、妙に落ち着くんです」

 徳島県でデザイナーとして働くYさん(40代)は、まわる洗濯機に癒やされつつ、つい愚痴をこぼすことさえある。

「(洗濯機に)心を許してしまっているんでしょうか。ストレスがピークの時は、お酒を飲みながら、まわる洗濯機に向かって上司の悪口を言っていることもあります。僕は実家暮らしなんですが、両親はあきれています」と少々照れくさそうに語る。

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麒麟・川島明が洗濯機を例えると…