阿部詩(右)(写真:東川哲也(朝日新聞出版)/JMPA)
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 連日の熱戦が繰り広げられたパリ五輪。日本の「お家芸」柔道は、喜びと悲しみが入り交じる結果だった。AERA 2024年8月26日号より。

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 連日の熱戦で寝不足が続いた人も多かっただろう。7月26日に開幕(一部競技は24日から)したパリ五輪は、8月11日に2週間超の競技日程を終えた。

 数多くのドラマが生まれたパリでの悲喜こもごもを振り返ってみたい。

 日本の「お家芸」柔道は、まさに歓喜と悲嘆が交錯した。

 女子48キロ級の角田夏実は五輪初出場ながら、鮮やかな巴投げを随所で繰り出し、この階級では2004年アテネ五輪での谷亮子以来の金メダル。しかも、パリ五輪での日本勢メダル第1号、夏季五輪での日本勢通算500個目のメダルという快挙のおまけつきだった。

 一方で、金メダル最右翼だった女子52キロ級の阿部詩は2回戦でまさかの一本負け。大本命であっても五輪という大舞台で結果を残す難しさを痛感させ、人目もはばからずに大号泣する阿部詩の姿は人々の同情を誘った。

「妹の分まで頑張る」

 その後に登場した男子66キロ級の阿部一二三は妹の無念を晴らすべく躍動し、東京五輪に続く五輪2連覇。決勝後のインタビューでは、

「妹の分までやっぱり兄が頑張らないと、っていう気持ちで一日頑張りました」

 と語り、頼りになる兄の姿と兄妹愛は感動を呼んだ。

 81キロ級の永瀬貴規もまた五輪2連覇を果たし、今大会の日本勢の金メダルは三つ。東京五輪での金9個には及ばなかったものの、個人戦では金、銀、銅と、合わせて七つのメダルを獲得した。

代表戦のドラマ

 今大会の柔道のハイライトというべきか、良くも悪くも大きな盛り上がりを見せたのは混合団体だった。個人戦は振るわなかった阿部詩の活躍もあり、順調に勝ち上がり、決勝へ。金メダルを争う相手は地元・フランス。日本の混合団体は世界選手権7連覇中も、前回の東京五輪では決勝でフランスに敗れていた。その相手と再び決勝の舞台で相まみえるという格好のリベンジの舞台だったが、最後にドラマが待っていた。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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