「阿部(慎之助)監督は頭を悩ませたと思います。若手を春先からスタメンで起用してきましたが、外野のレギュラーで一本立ちするまでには至らなかった。坂本、門脇の不振も誤算でした。深刻な得点力不足で、今年も厳しいかなと正直感じましたね」(スポーツ紙デスク)

 そうした状況でも、5月下旬に加入したエリエ・ヘルナンデスの活躍などでチームの状況も上向いた。そのヘルナンデスが8月11日の中日戦(バンテリン)で外野守備の際に左手首を骨折して長期離脱すると、この穴を埋める有力候補として強烈にアピールしたのは、ヘルナンデスに代わって1軍昇格した高卒2年目の浅野翔吾だった。レギュラーが固定できないため若手にチャンスが与えられる環境だが、秋広には声がかからなかった。

 秋広は外野の守備能力が高いわけではない。打撃で存在を証明しなければいけないが、懸念されるのは打者としての方向性を見誤ることだ。2022年から松井秀喜氏がつけていた背番号「55」を背負い、長距離砲としての期待が大きいが、松井氏や岡本和真のような生粋のスラッガーかというと疑問符が付く。

 アマチュア担当のスポーツ紙記者は、

「秋広が背番号55をつけるとなった時、松井さんとは打者のタイプが違うので重荷にならなければいいなという懸念は正直ありましたね」

 と話し、こう続けた。

「二松学舎大付属高の時に投手兼一塁手でしたが、プロのスカウトの評価が高かった点は打撃の柔らかさでした。難しい球を器用にさばいてヒットゾーンに飛ばす。打球の飛距離は凄かったですが、本質は中距離打者だと思います。身長2メートルの長身がフォーカスされますが、イコール長距離砲というわけではないです。駒田徳広さん(現巨人3軍監督)も身長191センチありますが、現役時代に20本塁打以上放ったシーズンは1年だけで、広角に安打を量産する打撃スタイルで2000安打をクリアしています」

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