2024年、夏。今年も甲子園で高校球児たちの熱戦が繰り広げられている。第106回全国高校野球選手権大会の名シーン、名勝負を振り返る。今回は、8月12日の本工(熊本)-広陵(広島)について。

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熊本工・山本投手(撮影/写真映像部・松永卓也)
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「序盤のギアは2速ぐらいだったんでしょうね」

 広陵の先発右腕である高尾響のピッチングを、熊本工の田島圭介監督はそう評する。制球の甘さ、ちょっとした隙を逃さずに主将で5番の浜口翔太が右中間へ二塁打。2死三塁から、先発マウンドも担った8番山本凌雅の中前適時打で熊本工が1点を先制したのは5回裏だ。だが、高尾のピッチングが尻上がりによくなっていくのがわかる。7回表に逆転を許した熊本工は、終盤に入ると広陵の大エースを打ち崩すことができなかった。田島監督の言葉だ。

「どっしりとピッチングをさせたくなかったんですが、高尾くんは全然慌てなかった。エンジンをどんどんと加速させてしまった」

熊本工・浜口(撮影/写真映像部・松永卓也)

 1年春からエースナンバーを背負い、今夏で4季連続の甲子園出場となる高尾は、広島大会で苦しんだ。

「投げ方がバラバラで制球が定まらなかった。県大会後に右足の上げ方や並進運動の部分を見直して投球フォームを修正しました」

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聖地のマウンドで蘇った