7回、広陵の逆転(撮影/写真映像部・松永卓也)

 状態が上向きだった高尾は、慣れ親しんだ聖地のマウンドで蘇った。1点差の9回裏。内野の失策と中前安打、さらに犠打で1死二、三塁とピンチを迎えた場面で、高尾のピッチングはトップギアに入った。146キロのストレートで見逃し三振。そして、最後の打者は3球で空振り三振に仕留めるのだから、余力は残っていただろうか。ショートでスタメン出場の酒井綾希人は、高尾の後ろ姿が頼もしかった。

「ピンチの場面でギアを上げるのが高尾。最終回はさすがです」 

9回、熊本工の投手交代(撮影/写真映像部・松永卓也)

 広陵の中井哲之監督は「ヒビキが粘り強く投げてくれた」と言い、伝統校対決を制して「広島弁で言うと、ぶち嬉しいです」と笑った。

 今夏の甲子園大会から、広陵は暑さ対策のためにホワイトカラーの帽子とアンダーシャツを取り入れた。夏の甲子園出場が25回目で過去に4度の準優勝を誇る広陵が、出場23回目にして3度の準優勝経験を持つ本工を新しいユニフォーム姿で破った。中井監督が、再び白い歯を見せる。

「白にして負けると何を言われるかわからなかったので、白で勝ててよかった」

 中井監督にとっては、歴代7位となる甲子園春夏通算40勝目である。

試合終了後の両校の選手たち(撮影/写真映像部・松永卓也)

(佐々木 亨)

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