駒大苫小牧の北海道勢初優勝など、西暦末尾4年の夏の選手権にはドラマが多い。今年はどんなドラマが見られるか? AERA増刊「甲子園2024」の記事を紹介する。
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2004年の夏を制したのは、駒大苫小牧だった。甲子園初勝利から、北海道勢初の頂点までの道のりは波瀾万丈。春夏連覇をめざす済美(愛媛)との決勝も、最大4点差を一時逆転し、中盤につけられた3点差を再逆転しての勝利だ。前年夏には倉敷工(岡山)に8点の大差をつけながら降雨によりノーゲーム。初勝利が幻となった当時の3年生の連名による熱いメッセージが、選手に届く。主将の佐々木孝介は初戦前夜、その全文をナインの前で読み上げていた。
初勝利のあとも日大三(西東京)、横浜(神奈川)と劣勢が予想された強敵を強力打線で撃破。そのたびに過去4年間勝ち星のなかった北海道の熱狂が膨れ上がる。苫小牧出身のある新聞記者は高校時代にこの熱を体験し、報道する側を志したのだという。駒苫は翌年、57年ぶりの夏連覇を遂げる。その瞬間にマウンドにいたのが、田中将大(楽天)。実は入学前、ノーゲームのあとに敗れた倉敷工戦をスタンドで見ていた。
なぜか、西暦末尾「4」年の夏の選手権にはドラマチックな初優勝が多い。1964年は高知。秋田工との1回戦、エースで4番の有藤通世(元ロッテ)が第1打席で顔に死球を受け、そのまま入院した。2回戦の花巻商(現・花巻東=岩手)戦では、主将の三野幸宏も死球で退場。主力2人を欠きながら、2年生投手・光内数喜の好投などでの快進撃は、傷だらけの優勝といわれた。
84年は、KK(桑田真澄・元巨人ほか、清原和博・元オリックスほか)が2年のPL学園(大阪)が断然優位。なにしろ決勝の相手・取手二(茨城)には、6月の練習試合で13−0と圧勝しているのだ。だが、雨で試合開始が遅れたのが影響したか、桑田がなかなかリズムに乗れない。初回に2点を先取した取手二が、優勢に試合を進める。それでも九回にPLが追いつき、お家芸の逆転Vが見えてきた十回、中島彰一が劇的な決勝3ラン。茨城勢の初優勝を置き土産に、木内幸男監督は常総学院(茨城)に移ることになる。