熱戦が繰り広げられるパリ五輪も終盤戦だ。いったい現地の盛り上がりはどういった状況なのか。8月3日から11日かけて、現地を取材したライター・翻訳者の松山ようこ氏に現地の様子をレポートしてもらった。自由に熱い応援をする海外の人たちに紛れて見えてきたものとは――。

【写真8枚】フランス人が大熱狂、パリ市内の様子はこんな感じ

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男子バレー準々決勝、日本を応援するフランス人とドイツ人(前列)と、その後ろでイタリアを応援するイタリア人(写真:松山ようこ)
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 男子バレーの準々決勝、日本対イタリアの試合を見に、会場の「パリ南アリーナ」を訪れた。2年前に購入したチケットが運良く的中した。

 フランスの地にもかかわらず、日本からかけつけたと思われる大勢のファンが「ニッポン、チャチャチャ」の大声援を日本代表に送っていた。日本だけでなくアジア系やヨーロッパ系の大勢のファンたちからも「ニッポン、チャチャチャ」の大声援を送られていた。会場を見渡すと、国籍も性別も多種多様だ。

 記者の隣に座っていたフランス人のおじさんも「ニッポン」コールや「ニシダ」チャチャチャをものすごい大きな声でしていた。おじさんは「世界トップレベルの選手が集まるのだから、どれもおもしろい」と言い、各競技を渡り歩いているという。おじさんの隣に座っていたドイツ人の友人も応援に加わっていた。

 その真後ろにはイタリアの国旗を掲げ、顔や首にも三色旗ペイントをした2人が「イーターリア!」と大声援を送っていた。

 第1セットと第2セットを日本が連取して迎えた第3セット。日本がマッチポイントを握り、勝利が目前に迫ると、観客席は総立ちに。後ろのイタリア人が「マンマ・ミーア!(なんてこった)」と嘆いた。

 イタリアがその大ピンチを凌いだ瞬間、今度はこちらが天を仰いだ。振り返ると、イタリア人は熱狂的に喜んでいた。こちらの視線に気づくと、すぐ眉毛をハの字にして「すまないね」といった表情を向けてきた。

 試合は残念ながら、日本が負けた。あまりにもショッキングな展開に、涙を流す女性ファンも。彼女たちは日本代表の様子をコート脇で最後まで見届けていた。試合中は敵味方に分かれての応援だったが、試合終了後はイタリアを含めていろんな国の人たちから「日本は本当にすばらしいチームだ」と声をかけられた。

男子バレー、日本対イタリア戦。試合終了後、選手だけではなく、観客もお互いに健闘を称えあった(写真:松山ようこ)
パリオリンピック総集編 (AERA増刊)セーヌ川で行われた華やかな開会式から始まった、パリオリンピック。 8月11日の最終日まで、海外大会の参加数としては過去最多の400人以上の日本人選手が繰り広げた、力闘の姿と感動の瞬間がつまった完全保存版です。
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