「オリンピックなんて迷惑なもんだ」という声も
パリは街中お祭り騒ぎかというとそうではない。オリンピックを歓迎していない人たちも多そうだ。
記者は空港からタクシーでパリ市内の宿まで移動したが、オリンピックの影響で、至るところが通行止めになっていた。アルメニア出身という運転手は「オリンピックなんて迷惑なもんだ。客もいつもより少ないね」と怒っていた。
宿に着くと、パリ市内はスーツケースを運ぶ観光客だらけ。さらに多くの警察官が辺りを警備していた。開会式当日には高速鉄道が各地で攻撃される事件が起きており、警戒が続いていたのだろう。
こんなパリの状況を避けるために、バカンスでパリを脱出した住民も少なからずいたようだ。パリに残った人たちからは「オリンピックに興味がない」という不機嫌な声も聞かれた。
柔道リネールが雑誌の表紙、ドキュメンタリー番組も
パリといえば「無愛想」「不親切」といったイメージがあるが、まずそのイメージを覆したのが、ボランティアだった。
競技会場はもちろん、主要な駅にはあり余るほどのボランティアが笑顔で立ち、世界から来た観光客を懇切丁寧に案内していた。
さらには古い地下鉄のドアの開け方がわからなかったとき、近くににいたフランス人がさっと開けてくれたり、駅や店で小銭の区別がすぐにつかず手間取っているとき、わかりやすく数えて出してくれたり。親切が広がっているように思えた。
パリに詳しい日本人の友人は笑いながら「パリじゃないみたい」「やればできるのね」と驚きを隠さなかった。
記者がパリ市内を歩いていているとボランティアの青年に「どこから来たの?」と尋ねられた。「日本から」と答えると、彼は「僕は柔道を習っているんだけれど、人生観が変わったよ。フランスに柔道をもたらしてくれてありがとう!」と感謝された。
フランスといえば、柔道大国だ。柔道男子のテディ・リネールは100キロ超級で金メダル。混合団体でも斉藤立を倒し、フランスに金メダルをもたらしている。
フランスではリネールの存在を至るところで感じることができる。記者がフランスに行く道中、機内に彼のドキュメンタリー番組がラインナップにあったり、シャルル・ド・ゴール空港に到着するやいなや、柔道着姿の凛々しいリネールを表紙にした雑誌が並べられていた。
柔道の競技が行われた会場では、リネールの顔写真を大きな看板のようにして応援するファンが報道されていたが、その背景にはこういった高い人気があるのだろう。ボランティアの彼はこう誇らしげに語った。
「リネールは偉大だよ。フランス人の誰もが彼をリスペクトしています」