「いろんな国の料理に合うあらゆる辛さとテイストのソースを用意します」と語るエド・カリーさん(写真/本人提供)

――あなたのトウガラシ開発のゴールや目的は?

カリー ひとつはトウガラシの力で医学や科学の発展に貢献すること。激辛トウガラシは、がんや心臓病、肥満、ALS、中毒などの分野で予防や治療の効果が期待されています。病気に対抗するためのナチュラルな手段を見つけ出すサポートができるといいですね。

 もうひとつは、ベストなホットソースをつくる会社になることです。ナチュラルで、オーガニックで、おいしい。そして、マイルドからスーパーホットまで全部取り揃えている。アメリカ、アジア、イギリス、ドイツ、中東……いろんな国の料理に合うあらゆる辛さとテイストのソースを用意します。そうすることで、妻が言うところの「世界一辛いものを食べるバカな男」から、タバスコのようなちょっとした辛さが好きな人まで、みんながこの「辛いコミュニティー」に参加して一緒に楽しめるようにしたいですね。

■「経験あってこそのチャレンジ」

――一方、激辛トウガラシは「おいしいものを楽しむ」というよりも、スリルや怖いもの見たさのチャレンジに使われているように思います。アメリカでは激辛スナックを食べる「ワン・チップ・チャレンジ」が流行し、日本でも若者の間で辛いものを食べる様子をSNSにアップすることが流行しています。

カリー 数週間前に日本の高校生が激辛チップスを食べて具合が悪くなったことは、私も聞いています。多分、彼らは誰もリスクを知らなかったんでしょう。世の中のほとんどの人は、激辛を食べると逃走反応という脳の反応が起こります。これ以上摂取しないように脳の指令によって具合が悪くなってしまうんです。激辛に慣れていない人がこうしたチャレンジをするのは絶対にやめるべきです。

 私はやりますよ。でも、私は40年やっていますからね。スリルを求めて激辛にチャレンジする人もいるでしょうけれど、クライミングやスカイダイビングと一緒です。経験があってこそのチャレンジなんです。

 それから、激辛スナックのなかには自然なトウガラシを使ったものと、ケミカルな辛み成分を使ったものがあります。ケミカルなものは自然なものに比べて吐き気が強く出たり、痛みが長く続くように感じます。18歳未満は食べてはいけないでしょう。

 繰り返しますけれど、慣れてない人がいきなりスーパーホットの世界に飛び込んではいけません。まずはマイルドな品種から、それもソースのようなもので試してみて、おいしいな、もっと刺激が欲しいなと思ったら、少しずつ量を増やしたり、辛い品種を試したりしてほしいです。

――今後、ペッパーXよりもさらに辛い品種をつくる可能性は?

カリー もうありますよ。辛いものをつくろうとした結果ではなく、風味を出すために品種改良した結果ですが、既にペッパーXよりも辛いものができています。私たちはペッパーYと呼んでいます。あと3年くらいデータを集めてSHU値を安定させなければなりませんが、2026年か27年にはギネスに申請する予定です。310万~320万SHU程度の数値になるでしょうね。それから、その次にはペッパーZも控えています。

(構成/AERA編集部・川口穣、取材通訳/松尾圭子)

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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