ギネス世界記録にも認定された世界一辛いトウガラシ「ペッパーX」や「キャロライナ・リーパー」を開発したエド・カリーさん(写真/本人提供)
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 トウガラシの辛さ世界一を競う争いは1990年代半ばから始まり、2000年代に入って熾烈を極めるようになった。新しい品種が続々と開発されてギネスの「世界一」は幾度も塗り替えられ、昨年秋には新たに「ペッパーX」がギネス世界記録に認定された。なぜそんなにも辛さを求めるのか。ペッパーXの開発者にインタビューした。

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 今年7月、激辛のポテトチップスを食べた東京の高校生14人が胃の痛みや吐き気を訴え、救急搬送される事態があった。高校生が食べたのは、「ブート・ジョロキア」というトウガラシが使われたものだった。ブート・ジョロキアは2007年に「世界一辛いトウガラシ」としてギネス世界記録に認定された品種で、トウガラシの辛さを測る単位スコヴィル・ヒート・ユニット(SHU)は約100万。タバスコソースが2500~5000SHUなので、単純計算でその200~400倍にのぼる。

 ただ、そのブート・ジョロキアもいまや数ある激辛品種の一つに過ぎない。辛さ世界一を巡る争いは熾烈を極め、次々に新しい品種が誕生している。いま「世界一辛い」とギネス世界記録に認定されているペッパーX(2023年認定)は、ギネス認定値で269万3000SHUとブート・ジョロキアをはるかにしのぐ。

なぜ、これほどまでに辛いトウガラシを開発するのか。激辛チャレンジのような流行をどう見ているのか。ペッパーXの開発者である、パッカーバット・ペッパーカンパニー(米・サウスカロライナ州)のエド・カリー代表に聞いた。

「世界一辛い」に執着はない

――もともと、エドさんは2013年にギネス世界記録にも認定された激辛品種「キャロライナ・リーパー」(220万SHU)の開発で知られています。その後、公式には証明されていないもののキャロライナ・リーパーより辛いと主張する品種が世に出てきましたが、ペッパーXによって再び世界一の地位を確固たるものにしました。世界一辛いトウガラシをつくることにこだわりを持っているのですか?

カリー 世界一辛い品種をつくったことは誇りに思いますが、決してそこに執着しているわけではありません。私がこだわっているのは、マイルドであろうと激辛であろうと、世界で最高のトウガラシ、そして最高のホットソースを提供することです。その証拠に、私たちは去年1年間で192の新しいソースを発売しました。私は常に新しいフレーバーをつくっていますし、そのために世界中を回っています。「世界一辛い」ではなくて、「世界一いい」チリを求める。そこにこだわりがあります。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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