2023年にギネス記録に認定された世界一辛いトウガラシ「ペッパーX」(写真/開発者のエド・カリーさん提供)

――ではペッパーXの開発に、より「辛い」ものをつくろうという意図はなかったということですか?

カリー そう。決して辛いものをつくることが目的だったわけではないんです。より風味を出すために品種改良した結果、辛くなったということ。辛いトウガラシをつくることではなくて、品種改良することが得意なんですよ。実際、私たちはハラペーニョとかフレズノのようなマイルドな品種もつくっているし。

 ホットソースやパウダーをつくるときには、トウガラシの風味がよければよいほど、いいものができます。それに、例えば5ポンドのキャロライナ・リーパーを使って作るのと同じ辛味、同じ量のホットソースが、2ポンドのペッパーXでできる、ということにもなりますよね。

――キャロライナ・リーパーとペッパーXには辛さ以外に味の違いがあるということでしょうか。

カリー キャロライナ・リーパーはまず、砂糖のような甘みを舌の前面で感じます。その後、すぐに口のなかが燃えるように熱くなって顔全体を火照らせ、それからだんだんと下の方へ降りて体内に伝わっていく。ペッパーXは逆なんです。熱さは胸の方で始まって、それがだんだんとうえに上がって顔へ伝わっていく。だから、痛みを感じる前にしっかりと味わう時間がありますよ。

妻には「頭がおかしい」と

――とはいえ、普通の人が食べられる辛さではないと思います。ギネス認定時のテレビ番組でエドさんはペッパーXを丸かじりしていましたが、大丈夫なのですか?

カリー 辛いものに慣れていない人がマネをするのは絶対にダメですよ。実際、慣れている私でもひとつ丸ごと食べると、6時間くらい悲惨な時間が続きます。あの番組で食べたものは非常にできがよくて、とっても甘みを感じておいしかったんです。それでも、その後の痛みはすごくきつかった。一緒に食べた人のなかには吐いてしまった人もいたし、丸ごと食べた一人は2日たってもまだ胃が痛いと言っていました。

 でも、私は好きなんですよね。痛みを感じたとしても食べたいくらいおいしいのと、自分の身体に起こる反応を楽しんでいる部分もあります。ほかの人にとっては転げまわるような痛みでも、私には気持ちがいいんですよ。皆さんがスキーやプロレスが好きなのと同じように、私はトウガラシを食べるのが好きなんです。

 妻は私のことを「頭がおかしい」というけれど、いつも食べています。

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