あんな出来事があった、こんな話題があった…と記事で振り返る「あのとき」。昨年の8月ごろに、多く読まれていた記事を紹介します(この記事は2023年8月6日に「AERA dot.」で掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。
* * *
体調不良により1週間休養していた、プロ野球・中日ドラゴンズのマスコット「ドアラ」が、8月1日の阪神戦から復帰した。着ぐるみなんだから、“中の人”は代打でもよかったのでは?……などと、思うことなかれ。選手同様、マスコットに命を吹き込むアクターにも、「流儀」がある。プロ野球チームに着ぐるみアクターを派遣した実績を持つ企業の代表・A氏に、着ぐるみ業界の裏話を聞いた。
そもそも、プロスポーツチームのマスコットはどんな人が演じているのか。A氏によると、チームから依頼を受けた着ぐるみ業者が、演技力・体力・経験値ともに申し分のないアクターを選び、派遣するケースが多いという。
「チアリーダーと一緒に踊ったり、アクロバットをしたりと、高度な身体能力が求められることもあります。若い人の仕事という印象があるかもしれませんが、長年訓練を続けているアクターだと、若手より動ける年配の人はざら。実際うちの会社にも、50代後半でプロスポーツチームのマスコットをレギュラーで担当している人がいます」
ギャラはチームの予算やパフォーマンス内容によりまちまちだ。高い場合は日給5万円ほど出ることもあるが、「手を振ってあいさつしてくれればよい」といったレベルであれば、2万円程度だという。
一方、アドリブでお笑いネタを披露する、ドアラや、つば九郎(東京ヤクルトスワローズ)のような、もはや着ぐるみの枠を超えて“タレント”と化しているマスコットの場合は、事情が変わってくる。
「球団が『このキャラクターはあなたしか演じられない』と評価すれば、アクターと専属契約を結んで、スケジュールを完璧に押さえているでしょう。その場合、月額50万円ほど払っていてもおかしくない。ただ、ドアラや、つば九郎レベルの機転や対応力が求められるとなると、“中の人”はタレントや芸人出身かもしれません。フリップ芸などの演出を考える、プロデューサーチームもついているのではないでしょうか」(A氏)