新感覚のアート体験ができる
阿部さんが「少しばかりの運命を感じています」と語るモネとのつながりは、「祖父母の家にもう昔からずっと」レプリカが飾られていたこと。「『枝越しの春』という作品と『睡蓮』がありまして、幼少の頃からモネの作品に触れていた」ためだろうか、今回の展覧会では「初めて見る風景、初めて見る画家の絵があるのにもかかわらず」「落ち着く、懐かしいなっていう感情が湧き起こって」きたという。「印象派の画家たちの絵の持つ力とか、イマーシブ展ならではの、作品に引き込む力がすごいからなのかなと感じました」
イマーシブ、とは、バーチャルリアリティや360度動画といった立体的な演出により、その世界への没入感を得られる体験型エンターテインメントを指す。前出のカーク氏によれば、この展覧会は、「普段あまり芸術に触れることのない方たちに、新しい芸術への入り方を体験していただきたい」「特に若い世代の人のきっかけになれば」という思いから生まれたものだ。
「いままでの、美術館に行って絵画を楽しむという枠を完全に外れて、新しい楽しみ方ができる」と阿部さん。「その世界に没入することによって、この絵のこと、この画家のことをもっと知りたいなという思いがどんどん湧き立つような」構成で、「絵画と、それに伴ってどんどん変わる照明と、クラシックの音楽と、さらには香りまで、五感のすべてを使って、印象派のすばらしさに触れ」ることができる。お勧めは「その場にずっと立ち止まるのではなく、時折ゆっくり歩いてみたり、うろうろしたり、また止まってみたり」という鑑賞方法。より没入感が得られ、「水の波紋とか風の流れとかも感じることができるので、その新感覚をぜひ楽しんでいただけたらなと思います」。
さらに阿部さんが勧めるのが、「モネの絵の中に入れるようなポイント」。モネが移住先のジヴェルニーに造った「水の庭」と日本風の太鼓橋を立体的に再現した“BRIDGE GARDEN ROOM”では、名画「睡蓮の池」の世界に入り込んだような写真が撮れる。