NHK大河ドラマ「光る君へ」での鬼気迫る藤原道兼役は大きな話題になった。ただ必死に芝居に取り組んできたが、この10年で少しずつ肩の力が抜けてきた。AERA2024年8月5日号より。
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今から10年前、「朝日のような夕日をつれて2014」(作・演出/鴻上尚史)に出演した玉置玲央さんは29歳で、出演者の中で最年少だった。ただ必死でがむしゃらだったという。
「いつか取り組んでみたい作品でした。だから作品に対しても、演劇に対しても思い入れが強すぎたなあと。今、客観的に考えると、もう少し冷静に作品のことも、お芝居のこともとらえられたなと思います」
ちょうど芝居が仲間たちと楽しむツールから、自分の「生業」になっていくタイミングでもあった。あの頃のがむしゃらさが今、「まろみを帯びてきた」と言う。
「がむしゃらさはあるんです。でもドバッと器に注ぐのではなく、器にめがけてキューッと正しい量を注げるようになってきたというか」
先輩俳優から教わった
爪痕を残し、次につなげることを考えるよりも「好きなことを職業にできているんだから、無理をせず、好きなことを好きと思えるままにがんばっていこう」と、肩の力が抜けてきた。
演劇に加えて、映像の世界でも評価されている。2018年、故・大杉漣さん主演の映画「教誨師」では死刑囚を演じ、毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞を受賞。そして、今年1月から始まったNHK大河ドラマ「光る君へ」の藤原道兼役。その演技力に注目が集まる。
先輩俳優から教わったことが多いと言う。大杉漣さんもその一人。「教誨師」で玉置さんが役作りに手こずっていたとき、ボソッとこう言ってくれた。
「心底からしゃべって、それをぶつけ合っていれば、それがお芝居になるから。それが役になるから大丈夫でしょう」
励まそうとしてくれたのか、発破をかけようとしてくれたのかは分からない。
「必要以上にがんばらなくても、きっとやりたいと思えることにたどりつける、役になれると僕はとらえたんです。この言葉は、その後の指標になりました。僕にとって宝物の言葉です」