そこで、いったん、自動化をやめて、人間のチャットに戻しました。私がボットのふりをしてメッセージを返したんです。ホテルのコンシェルジュサービスとして導入してもらっていたのですが、人間に戻したら、ホテルの口コミサイトに「すごいAIのサービスがある」と書き込まれ、そのホテルの人気ランキングがどんどん上っていった。
そこからチャットボットの開発では会話の人間らしさを重視するようになりました。自分でボットのふりをしたおかげです。
――御社のチャットボットは2017年11月7日に成田空港に導入されました。国際空港でチャットボットが採用される世界初の事例となりました。
綱川:成田空港からお話があったとき、当時は我々の規模が小さかったので、冷やかしかなと思ったのですが、オフィスに来て下さって、自動化を頼まれました。ホテルで失敗していないならば空港でもできるでしょうと。たしかに、ホテルはカスタマーサービスに対する期待値は高いんです。
例えば、ホテルでチャットボットが人命救助につながったこともあります。旅行で日本に来て、都内のホテルに幼い子どもと宿泊中のアメリカ人の女性でした。チャットボットに打ち込まれた「救急車、今すぐ呼んで」という一文をモニタリングによって見つけて、フロントデスクに電話で支援要請をし、一命をとりとめたことがありました。持病のあるお子さんが呼吸困難に陥っていたんです。
快復してから、その女性になぜ電話ではなくてチャットボットに書き込んだか、理由をきくと、「フロントデスクでは英語が通じなかったから」でした。このホテルでの経験から、24時間のモニタリングにさらに投資することを決めました。
――人の命を左右する重要なシーンに関わるサービスになりつつあるんですね。
綱川:実は、似たようなことが今年の元旦に発生した能登半島地震でもあったのです。地震発生直後は、電話が通じなくなりましたよね。そのとき、住所付きの救助要請が観光用のチャットボットに入っていたのです。それを見つけた私は119番の後、珠洲市消防にかけました。200回くらかけてもまったく繋がらなかったため、連携した先は珠洲市職員と間に入る観光関係者でした。
消防に限らず、空港などでは24時間稼働のモニタリングのチームが爆破予告などの有事が発生した場合は空港警察とも連携をしながら対応してます。
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