綱川明美さん(手前)に起業までの経緯を編集長の鎌田が倫子がたずねた(撮影/写真映像部・松永卓也)

――そこからなぜ起業を?

 綱川:ひとことで言えば、「ひらめき」があったからですね。最初はチャットボットの開発なんて考えてもいませんでした。初めての場所に旅行に行ったときに地元の人が案内してくれるようなサービスがほしいと思い、自分で作ったのが始まりです。当初は、訪日外国人向けの穴場メディアとしてサービスをリリースしました。

 ただ、ユーザーにインタビューをすると、穴場の紹介よりも「日本語が読めないから書いてあることを教えてほしい」「電話を代わりにかけて予約してほしい」などコンシェルジュのようなサービスにニーズがあった。サイトに、そういったサービスをつけると、今度は「リアルタイムで対応してほしい」と。そこでチャットの機能をつけたんです。

 実は、最初は自分でメッセージを返していました。でも、メッセージが多すぎて仕事にならない。なんとかしたいとエンジニアに相談して、返ってきた答えが「チャットボット」だった。言葉も知らなかったので、検索しました。チャットとロボットの融合という説明。作れるのであれば、自動化しようとなったのが、2016年ごろでした。

 ただ、エンジニアと私の想定していた開発期間が違った。待っても待っても試作品が出てこない。私としては、急いで試作品を投資家さんたちに見せたかった。もう資金が底をつきかけていて、次の資金を調達しなければならないタイミングだったんです。結局、しびれを切らして自分で作りました。

 ――え、理系ですか?

 綱川さん:数学は得意でしたが、文系です。ただ、検索すれば何でも情報はネット上にあるので、作れました。ただし、おもちゃみたいな試作品です。何か一つでも文字を間違えると全く反応しない代物でした。投資家さんに「触らせて」と頼まれたときも「ごめんさない、私、潔癖症なので」と言って乗り切りました。

 無事4000万円の資金を調達できて、もっとまともな試作品を作ったのはいいのですが、また問題が発生しました。誰も使ってくれなかったのです。会話が不自然だったんですね。

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自分で「ボット」のふりをして気づいたこと